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介福国家試験対策「自立と尊厳」とは?大阪の介護養成学校講師が解説

我々介護職は利用者をただ単に支援するだけではなく、利用者様自身が自分で選択し、自己決定を促すよう支援する必要があります。また、すべてのことを介護するのではなく利用者様自身ができる事は利用者様自身でしてもらう事が重要です。このように利用者様が持っている力を最大限に引き出し、自分の意思や自分の力で生活してもらうことを「自立支援」残存能力の活用」といいます。またここでは「自立」「自律」を分けて考えておかなければなりません。

「自立」とは、他者の力や制度を利用することなく、自分自身の力で生活することができ、経済的にも安定し、自分自身で情報を取得し物事を決定することができことです。

「自律」とは、法律やルールに従って物事を判断し、生活していくことをいいます。自律した精神は、自立した行動につながります。

ADL・IADL・QOLとは

ここでよく介護の現場でも出てくる用語の説明をしておきます。

ADL(日常生活動作)

立つ、座る、歩くなどの基本的動作のことで、食事や排泄、入浴、更衣、コミニケーション能力などのことです。

IADL(集団的日常生活動作)

基本的動作(ADL)をもとに掃除、洗濯、買い物、調理、金銭管理、公共機関の利用など、より複雑な動作が含まれることです。

QOL(生活の質)

精神的な満足度や幸福感などです。介護現場ではその人の望む生活の質に焦点を当てて支援していくことが重要です。また、QOLを向上させるために大切なものに身体的側面(身体的に働きかけること)」「心理的側面(心に働きかけること)」「社会的側面(他者との交流や役割を持てるように働きかけること)」に考慮をして支援を行っていきましょう。

自己決定と自己選択について

介護福祉士の試験にはよくひっかけ問題が出てきます。その上で気をつけて欲しいのが、介護とはすべての行動や選択に対して代わりに行うわけでなく、利用者様が自己決定や自己選択をする機会を提供し意欲を引き出す。といった選択肢が基本的に「〇」になることが多いのが特徴です。

また、自己決定や自己選択と言う考え方は、1960年代にアメリカで広まった自立生活運動(IL運動)によって広まりました。

権利擁護(アドボカシー)に関連する制度や機関

アドボカシーとは、「権利を守ること」ということです。利用者様の多くは高齢者や障害者であり、何かしらの疾患や障害を抱えています。そのことにより、判断力の低下などで自分の権利やニーズを主張することが難しい状態にあります。こうした時に、利用者の意思や主張を代弁し、家族の意向も踏まえ、必要なサービスを制度につなげることが介護職に求められます。

【成年後見制度】

認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人が、家庭裁判所によって選任された成年後見が、その対象者の財産管理や福祉サービスの契約代行などを行える制度です。

【日常生活自立支援事業】

認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人が、社会福祉協議会の職員により、福祉サービスの利用手続きの代行や日常の金銭管理などを行う制度です。

【地域包括支援センター】

権利擁護業務として高齢者虐待への対応などを担い、虐待防止ネットワークを構築して地域における連携の拠点となる機関です。

介福試験で権利擁護関連で過去に出題された問題

【問題】

ここにこのような問題が出題されました。軽度認知症がある一人暮らしをしている利用者さんから、「自分の親族が勝手にお金を使いこんでいるらしい」とホームヘルパーが聞きました。ホームヘルパーは、サービス提供責任者にこのことを引き継ぎしました。はじめに取り組むべき事は、成年後見制度の利用と判断し、そのことを利用者さんに勧めた。

【正解】

この問題の答えは「×」になります。成年後見制度には財産管理の代理権が含まれてはいるが、このケースは、親族による経済的虐待の可能性が考えられます。まずは虐待防止ネットワークの役割を担っている地域包括支援センターなどに相談し対応策を検討するのが適切です。

尊厳と自立について明記された福祉や介護の法律

介護において、利用者の尊厳を守り、自立を支援することが重要です。その尊厳や自立は社会福祉法や介護保険法など、福祉や介護の基盤となる法律で明記されています。介福の対策としてこの明記されている法律をしっかりと理解することが重要です。それではその法律について解説していきます。

社会福祉法(第3条:福祉サービスの基本的理念)

福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、またその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質・適切なものでなければならない

介護保険法(第1条:目的)

要介護状態になり、介護、機能訓練、看護などを必要とする人が、尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、国民の保健医療の向上と福祉の増進を図る

障害者基本法(第3条:基本的理念)

すべての障害者が、障害者でないものと等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する

障害者総合支援法(第1条:目的)

障害者および障害児が、基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営むことができるように、必要な支援を総合的に行い、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し、安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する

障害者総合支援法(第3条:国民の責務)

すべての国民は、障害の有無にかかわらず障害者等が自立した日常生活や社会生活を営むことができるような地域社会の実現に協力するよう、努めなければならない

社会福祉士及び介護福祉士法(第44条の2:誠実義務)

担当するものが個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実に業務を行わなければならない

精神保健福祉士法(第38条の2:誠実義務)

担当するものが個人の尊厳を保持し、自立した生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実に業務を行わなければならない

過去に尊厳と自立に関する法律で出題された問題

【問題】

障害者総合支援法では、すべての国民は、障害者等が自立した生活を営めるような地域社会の実現に協力するよう努めなければならないと規定されている

【正解】

正解は「○」になります。障害者総合支援では、障害者や障害児が安心して暮らすことができるよう地域社会の実現に寄与することを目的として掲げられています。

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