虐待防止についての制度を大阪介護の資格の学校講師が徹底解説
日本における虐待防止に関する制度は大きく2つ存在します。それは65歳以上の高齢者を対象にした「高齢者虐待防止法」と障害者全般を対象として「障害者虐待防止法」によって虐待の種類が定義され、その対応について提示されています。この内容は、介護福祉士国家試験の範囲にも含まれる内容となりますので国家試験に挑戦する方はぜひこのページを見て学んでいただければと思います。それでは虐待防止法に関する法律について解説していきます。
高齢者虐待防止法
まず高齢者の定義は65歳以上の人が対象です。「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」は65歳以上の高齢者に対する「擁護者」と「要介護施設従事者」などによる虐待を高齢者虐待と定義しています。虐待の種類には5つあり、「身体的虐待」「介護放棄(ネグレクト)」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」に分類することができます。
高齢者虐待防止法では虐待を受けた高齢者を保護するための措置について定められています。それでは高齢者虐待を発見したときの対応措置についてまとめていきます。
高齢者虐待発見時の対応
【対応1:通報】
高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合には高齢者虐待防止法において通報義務が課されます。
【対応2:立ち入り調査】
市町村長は高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は立ち入り調査をする権限があります。立ち入り調査にあたっては所轄の警察署長に援助を求めることもできます。
【対応3:保護のための措置】
老人福祉法による保護のための措置が行われます。一次保護などの対応が取られます。
ここで問題!
【問題】
「高齢者虐待防止法」に基づく立ち入り調査を行うときは、警察官の同行が義務付けられている。
【答え】
答えは「×」です。市町村長は、虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合には、立ち入り調査を行うことができる。立ち入り調査にあたって所轄の警察署に援助を求めることはできるが、警察官の同行は義務付けられてはいない。
障害者虐待防止法
障害者虐待防止法では、障害者に対する「養護者」「障害者福祉施設従事者」「使用者(事業主など)」などによる虐待を、障害者虐待と定義しています。虐待の種類は高齢者虐待防止法と同じく、身体的虐待、介護放棄(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5つになります。
障害者虐待防止法にも通報義務があり、虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合には、速やかに市町村に通報しなければなりません。(使用者による虐待を発見した場合は市町村又は都道府県に通報する義務があります。通報・届け出を受けた市町村は都道府県に通知し、それを受けた都道府県は、都道府県労働局に報告する義務があります)
また、学校長や保育所長、医療機関の管理者には理解を深めるための研修の実施、相談体制の整備など虐待を防止するために必要な措置をとることが課せられています。
※同様に虐待防止を規定した「児童虐待防止法」に規定する児童虐待には「経済的虐待」という定義はありません。
DV防止法
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」は、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護で自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的に2001年(平成13年)に制定されました。
DV防止法では被害者の保護のため、「保護命令の発令」と「配偶者暴力相談支援センターの設置」などが規定されています。
保護命令の発令と内容
【保護命令の発令】
配偶者からの身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた被害者が、配偶者からのさらなる身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受ける恐れが大きい場合に、裁判所は被害者からの申し立てにより、加害者に対し保護命令を発令することができます。
【保護命令の内容】
①被害者への接近禁止命令(6ヶ月)
②被害者と同居する子への接近禁止命令(6ヶ月)
③被害者の親族等への接近禁止命令(6ヶ月)
④電話等禁止命令(6ヶ月)
⑤被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令(2ヶ月)
配偶者暴力相談支援センター
配偶者暴力相談支援センターは「DV防止法」に基づき、都道府県に設置義務、市町村に設置の努力義務があり、都道府県では婦人相談所などが配偶者暴力相談支援センターの機能を果たしています。配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力防止や被害者の保護のために次の業務を行います。
配偶者暴力相談支援センターの業務
①相談・相談機関の紹介
②カウンセリング
③被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護
④被害者の自立生活促進のための情報提供その他の援助
⑤被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助
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