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移動に関連した介福試験範囲を大阪の介護の学校講師が解説します

今回は移動に関連する内容をこのページで介護福祉試験対策としてまとめていきたいと思います。移動するための体位、歩行に関しての仕組みや歩行障害により二次的に起こる病気なども解説していきますので、介護福祉の試験を受験される方はぜひ参考にしていただければと思います。また、介護福祉国家試験の試験範囲であるこころとからだのしくみ」では廃用症候群に関しては出題傾向の高い試験範囲なりますのでしっかりと覚えておきましょう。

移動とは

移動と言う行為は単に場所を移ることだけに限らず、姿勢を変えたり起き上がるといった行為もその中に含まれています。また、ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)とも密接に関わる行為となります。移動する事は活動範囲や生活圏を広げるために大切なものですが、移動という動作を行うことで筋力低下の防止にもつながっています。また、体位を変える事は褥瘡の予防にもつながり、歩くことにより血流の改善をもたらしてくれます。

姿勢と体位の保持と歩行

姿勢の安定について

人が移動する時は、必ず重心も移動してバランスをとっています。そして、重心を通る重心線が指示器底面の中心にあれば姿勢が安定します。

体位の種類について

人の姿勢や体位には「臥位(仰臥位・側臥位)」「座位(半座(ファーラー位)・端座位)」「立位」があります。立位に近づくほど重心が高くなり、支持基底面積も狭くなるため安定感が悪くなります。また、関節が動かなくなった場合にADLに最も支障が少ない姿勢のこと「良肢位」といいます。

歩行の仕組み

歩行という動作は立位を保ちながら、足を交互に踏み出していくものです。歩行の場合に重心は右足を上げれば左側に、左足をあげれば右側に動いていきます。このような歩行は重心と支持基底底面の移動を繰り返している複雑な動作といえます。

筋力と骨の強化の仕組み

長期にわたって寝たきりの状態が続くと骨量や筋肉量が減少し、骨密度が低下します。そのため適度な運動などの負荷を与えることにより筋肉を強化し、骨を作る骨芽細胞を刺激する必要があります。そのため寝たきりの状態の方も出来る限り離床を目指して運動を行う必要があります。筋肉が動くことで骨も刺激され血流の改善や、基礎代謝の上昇にもつながります。

また、骨の強化には栄養素も関係しており、カルシウムを摂取することが大切です。カルシウムの吸収を妨げる飲酒は控え、日光に当たることによりカルシウムの吸収を促進するビタミンD作り出すようことが骨の強化のためには重要です。

心身機能の低下が及ぼす影響について

移動の機能が低下すると転倒による骨折や様々な疾患を原因とした歩行の障害につながります。それではどのようにからだへの影響があるのかをここでは解説していきます。

転倒による骨折

高齢になると人間の骨は骨量の減少や骨密度の低下により骨がもろくなります。それにより骨折をしやすい状態を骨粗しょう症といいます。転倒を原因とした骨折の多い部位には次のような箇所があります。

転倒による高齢者に多い骨折部位

【上腕骨近位端骨折】

腕の付け根、肩にあたる骨の部位です。転倒により地面に肩を打ちつけることによって骨折するケースが多

【橈骨遠位端骨折】

手首にある骨の部位です。転倒したときに地面に手をついて骨折するケースが多い

【脊椎圧迫骨折】

背骨にある骨の部位です。骨粗しょう症の人に多く見られ、勢い良く座った時や転倒して尻餅をついたときに脊椎に圧力がかかることにより押し潰されるように骨折します。

【大腿骨頸部骨折】

足の付け根にある骨の部位です。骨折が最も多い部位で、寝たきりの状態につながりやすいといった特徴があります。

疾患による歩行障害

歩行の障害には特定の疾患を原因として引き起こされるものもあります。それではその疾患と歩行障害の特徴について解説していきます。

疾患名と関係する歩行障害

【パーキンソン病】

「小刻み歩行」になり、歩幅が極端に狭くなります。歩きはじめの1歩が踏み出せない「すくみ足」もみられます。前に重心が行くので前方に転倒しやすい「突進現象」といった特徴もあります。歩行が不安定な時はいちど立ち止まり、足を後ろにして重心を後ろに向けて再度、姿勢を整えます。【脊柱管狭窄症】

足の痛みやしびれを感じて、しばらく休むと回復し、再び歩き出すとまた痛みやしびれを感じる「間欠性跛行」の症状が見られます。

【脊髄小脳変性症】

ぎこちなく不安定な歩き方になる「失調性歩行」が特徴です。

【筋萎縮性側索硬化症(ALS)】

全身の筋力が徐々に低下する疾患であり、病状の進行によって自力の歩行が困難になってきます。

【筋ジストロフィー】

からだを左右に振りながら歩く「動揺性歩行」が見られます。

廃用症候群について

廃用症候群とは、「生活不活発病」とも呼ばれる病気で、寝たきりなどにより長期にわたって運動しない状態が続くことにより、心身の機能が低下していくことで二次的に生まれる症状のことです。それではどのような症状がからだに起こるのかを解説します。

廃用症候群の主な症状

【関節拘縮】

関節を伸ばしたまま動かさない状態が続くことにより、関節の周りの筋肉が硬くなり、関節の可動域が狭くなります。

【筋萎縮】

からだを動かさなくなるため筋肉自体が細くなり、筋力の低下が起こります。トレーニングをすることにより改善を行うことが可能です。

【骨萎縮】

骨や筋肉に対して体重による負荷などの刺激が加わらなくなることにより、カルシウムの量が減ってしまい骨がもろくなる状態です。骨粗しょう症の原因ともなります。

【起立性低血圧】

臥位の状態が続くことにより、血圧調整作用が低下し、寝ている状態から座位や立位に体位変換すると血液が下半身に移動することにより血圧が低下し、ふらついたりぼーっとするような状態になります。

【深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)】

長時間、同じ姿勢を保ち続けることにより下肢の深部静脈で血液の流れが滞ることにより、血栓ができます。それにより下肢の浮腫や痛みなどの症状が現れます。

【心肺機能低下】

運動を行わなくなることにより、心臓の負荷がかからないため心臓の機能が低下し、疲れやすくなったり、息切れや動機がみられるようになります。

【精神機能低下】

寝たきりにより何もすることができない状態が続くことで刺激が少なくなります。それにより思考力や意欲の低下が見られうつなどの症状にも関係します。

【褥瘡】

長期間の寝たきりによりからだの同じ部分が圧迫されることにより、血流の流れが途絶え、皮膚が赤くなり、ひどくなるとただれた状態になります。

【肺炎】

食物を飲み込むための嚥下機能が低下することにより、誤嚥性肺炎などが引き起こしやすくなります。

廃用症候群の予防

廃用症候群を予防するためには定期的な運動や体位変換が重要になります。例えばベッドから離れることが難しい状態の利用者でもベッド上で行える簡易なレクレーションを行うことにより、からだを動かしたり考えることを行います。

また、起立性低血圧の場合には、ベッド上で座位を保持する機会を設けることによりからだを起こしたときに起こる血圧の低下を予防することができます。

深部静脈血栓症の予防には早期の離床が効果的になります。我々、介護職は寝たきりだからといって過度な介助を行うのではなく利用者の残存能力を活用した支援を工夫して行っていくことが重要です。

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