「食事の栄養や食べる行為」大阪介護の福祉学校実務者研修講師が解説
今回、実務者研修の授業の中にも含まれる食事についての知識を大阪で実務者研修専任教員の講師が解説していきます。今回、解説する食事に関連した知識は、実務者研修の資格取得時にも資料や実技を通して、しっかりと学んでもらいますが、介護福祉士国家試験の「こころとからだのしくみ」のカリキュラムの中にも含まれる内容となりますので、介護福祉士国家試験にチャレンジされる方にもしっかりと参考になるように解説していきます。
そもそも食事とは、栄養素の摂取を通じて生命の維持を図ることが大きな目的となります。そのため食事は、人にとって基本的な欲求を満たすものでもあり、一方楽しみを感じることができる行為ではないでしょうか。
楽しく美味しく食べる事は、食事の自立を促進させバランスのとれた栄養素の摂取に関係しているといえます。それではまずは栄養素から説明していきたいと思います。
3大栄養素
3大栄養素はエネルギー源と深く関わりのある栄養素です。1日の必要なエネルギー量の算出方法は、「基礎代謝量(生命活動の維持に必要な最低限のエネルギー量) ×活動係数×ストレス係数)」によって算出することができます。活動係数とストレス係数の数値は、人それぞれ違うのでその人の状態に合わせたものを選んで計算するようにします。それでは3大栄養素のそれぞれの主な作用と多く含まれる食品は次のようになります。
炭水化物(糖質)
主な作用は脳やからだを動かすエネルギー源になり、脂質の代謝にも関わります。また、この炭水化物には消化酵素によって消化されずエネルギー源にならない食物繊維も含まれています。食物繊維は、糖質の吸収を遅らせることや肥満の予防、腸管からのコレステロール吸収の阻害などの作用があります。穀物、砂糖、芋類に多く含まれています。
脂質
主な作用は細胞膜やホルモンの構成成分であり、からだを動かすエネルギー源になります。栄養素の中で1g当たりのエネルギー発生量が最も多い栄養素です。肉、バター、マーガリンに多く含まれています。
タンパク質
アミノ酸によって構成されています。主な作用は細胞質の主成分となり、筋肉や臓器などのからだの組織を作る栄養素です。肉、魚、大豆、卵に多く含まれています。
5大栄養素
5大栄養素は、先程の3大栄養素に無機質(ミネラル)とビタミンの2つがプラスされて5大栄養素といわれます。5大栄養素の中でもそれぞれに役割があり、大きく分けるとからだの組織を作るのは「脂質」「タンパク質」「無機質(ミネラル)」であり、からだの機能を調整するのは「無機質(ミネラル)」「ビタミン」になります。それではその2つについて解説します。
無機質(ミネラル)
無機質(ミネラル)には「骨の生成」「細胞外液と細胞内液の浸透圧調節」といった作用があります。それでは特質の種類や作用にはどのようなものがあるか紹介します。
無機質(ミネラル)の作用と欠乏症
【カルシウム】
主な作用は、「骨などの生成」「血液凝固の促進」です。牛乳、乳製品、小魚、海藻類などに多く含まれています。主な欠乏症は「骨粗しょう症」になります。
【鉄】
主な作用は、酸素を運ぶ「ヘモグロビンの生成」です。海藻類、レバー、大豆を含まれています。主な欠乏症は「鉄欠乏性貧血」になります。
【ナトリウム】
主な作用は、「細胞外液の浸透圧の調節」を行ってくれます。食塩、味噌、醤油に多く含まれています。主な欠乏症は「食欲不振」になります。
【カリウム】
主な作用は、「細胞内液の浸透圧の調節」を行ってくれます。果物、野菜、芋類も多く含まれています。主な欠乏症は「筋力の低下」「不整脈」になります。
ビタミン
ビタミンには糖質や脂質の代謝、カルシウムの吸収促進など、からだの機能を調整する作用があります。ビタミンの種類は、大きく分けると「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」に分類されます。
脂溶性ビタミンの作用と欠乏症
脂溶性ビタミンは、油脂に溶けやすく加熱などの調理に適しています。そんな脂溶性ビタミンの作用と欠乏症についてしっかりと覚えておきましょう。
【ビタミンA】
主な作用は「視力の維持」です。レバー、卵黄、緑黄色野菜に多く含まれています。主な欠乏症は「夜盲症」になります。
【ビタミンD】
主な作用は「カルシウムの吸収促進」です。魚、きのこ類、肝油に多く含まれています。主な欠乏症は「くる病」「骨軟化症」になります。
【ビタミンE】
主な作用は「脂質の酸化防止」「生殖機能の維持」です。胚芽、大豆、緑黄色野菜に多く含まれています。主な欠乏症は「不妊症」「溶血性貧血」「動脈硬化」になります。
【ビタミンK】
主な作用は「血液の凝固」です。納豆、緑黄色野菜に多く含まれています。主な欠乏症は「血液凝固の遅延」になります。
水溶性ビタミンの作用と欠乏症
水溶性ビタミンは水に溶けやすく、調理方法によってはその成分が失われることもあります。そんな水溶性ビタミンはどのような作用があり、主な欠乏症とともに多く含まれる食品も覚えておきましょう。
【ビタミンB1】
主な作用は「糖質の代謝」です。豚肉、豆腐、胚芽に多く含まれています。主な欠乏症は「脚気」「多発性神経炎」になります。
【ビタミンB2】
主な作用は「脂質の代謝」です。卵黄、レバー、緑黄色野菜に多く含まれています。主な欠乏症は「口内炎」「皮膚炎」になります。
【ビタミンC】
主な作用は「コラーゲンの合成」です。緑黄色野菜、果物、芋類に多く含まれています。主な欠乏症は「壊血病」になります。
生きていくために必要な水分量
バランスのとれた栄養素の摂取とともに適切な量の水分を摂取する必要もあります。1日に必要な水分量は、成人で約2500mℓとされています。摂取する水分量と排泄する水分量は次の通りです。
1日に摂取し排排泄する水分量
【摂取する水分量】
・口から摂取する水分量「1200mℓ」
・食物に含まれる水分量「1000mℓ」
・栄養素の代謝 「300mℓ」
【排泄する水分量】
・尿としての排泄される水分量「1500mℓ」
・便として排泄される水分量 「100mℓ」
・不感蒸泄(吐息や汗など)の水分量「900mℓ」
食べるというしくみ
食べ物を口に入れて摂食し、噛み砕き(咀嚼)、飲み込む(嚥下)までの過程には5つの段階があります。その5つの段階とは
①先行期→ ②準備期→ ③口腔期→④咽頭期→⑤食道期になります。
それではその5つの段階について詳しく解説していきます。
摂食から嚥下までの5段階
【①先行期】
視覚と嗅覚により食べて良いものなのかどうかを認知します。その後、口まで運ぶ段階でこの時に大唾液分泌量が増加します。
【②準備期】
食物を口腔内に入れて噛み砕きながら唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすいように「食塊」を作る段階です。
【③口腔期】
舌の運動により、食塊を咽頭に送り込む段階です。
【④咽頭期】
咽頭から食道へ食塊を送り込む段階です。食塊が鼻腔に入るのを防ぐために、「軟口蓋」が鼻腔を防ぎます。また、食塊が気管に入ることを防ぐため「喉頭蓋」が気管を防ぎます。
【⑤食道期】
食道から胃へ食塊を送り込む段階です。軟口蓋と喉頭蓋が開き、食塊は食道の反射運動と蠕動運動によって胃に送られます。
食事管理が必要な疾患
特定の疾患やからだの状態にある利用者様には、食事制限や栄養管理が必要になる場合も考えられます。よく制限を行うのが塩分、タンパク質、カリウム、エネルギーの栄養素になります。それではどのような栄養素と疾患が関係しているか次にまとめていきます。
食事管理が必要な疾患や状態
【塩分の制限】
高血圧、慢性腎不全、虚血性心疾患など
【タンパク質とカリウムの制限】
血液透析の治療対象(慢性腎不全、糖尿病性腎症、尿毒症など)、高血圧の場合は摂取を心がける
【エネルギー量の制限】
糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症など)、肥満など。食物繊維の摂取を心がけます
ここで問題!
【問題】
脂質異常症は、食事のタンパク質制限が必要な疾患である。
【答え】
答えは「×」です。脂質異常症で必要な食事制限は、エネルギー摂取量の制限です
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