【大阪介護の学校講師が解説】知的障害と精神障害について
介護福祉国家試験の試験範囲でもある「知的障害」と「精神障害」について解説します。国家試験のカリキュラムは「障害の理解」に含まれる内容となります。介護福祉試験対策を受験される方は、知的障害や精神障害の原因や介護においての留意点などのポイントをしっかりと覚えておく必要があります。
知的障害について
知的障害の原因
知的障害は、知能の発達に遅れがあることが特徴であり、「言語機能」「運動機能」「コミュニケーション能力」「社会への適応能力」などに全般的な障害が見られます。発達期(おおむね18歳未満)に発現し、有病率は女性よりも男性の方が高く、医学的な用語として「精神遅滞」と呼ばれることもあります。
染色体異常(ダウン症候群など)や先天性代謝異常(フェニルケトン尿症など)のほかに、胎児期の感染症や出産時の障害による脳の発育不全や損傷なども原因となります。また、危険因子として親に喫煙や飲酒習慣があることが挙げられます。
ダウン症候群
ダウン症候群は、通常46個ある染色体が1つ多くなってしまうことが原因で発症します。21番目の染色体が1つ多くなること(21トリソミー)が原因であり、高齢出産により発症率が高まります。
【ダウン症候群の特徴】
ダウン症候群は「低身長」「知能・運動機能の発達遅滞」「難聴」などの特徴があります。また生まれつき心臓に何らかの病気を抱えていることも多いです。
見た目にも特徴があり、つり上がっため、幅広く扁平な鼻、突出した舌、変形した耳など似たような容貌が特徴的です。
ここで問題!
【問題】
ダウン症候群の原因は、先天性代謝異常である。
【答え】
答えは「×」です。ダウン症候群は、染色体の数が通常より多くなることによって発症します。
【知的障害の方へのコミュニケーション】
知的障害のある方とコミニケーションを図るときには、理解をしてもらうために言葉だけでなく身振りや手振り、絵カードなどを使った「視覚支援」が大切です。また、成人した知的障害の方に対しては1人の大人として接していくことが大切です。
【ライフステージに応じた支援】
知的障害のある人には、次の6つのライフステージに適した支援を行っていくことが大切です。
①乳児期:家族の障害の受容や療育方法の支援を行う
②幼児期:子供が地域の生活に溶け込めるように、幼稚園や保育園への入園などの支援を行う
③学童期:生活の拠点が家庭・学校・地域にまたがる中、放課後の過ごし方について支援を行う
④成人期:自立した生活が送れるように就労を目的としたサービスの利用等の支援を行う
⑤壮年期:両親が老年期を迎えることを考慮して、死別後の生活に適応していくための支援を行う
⑥老年期:介護サービスの利用を視野に入れて、住み慣れた地域で暮らし続けるように支援を行う
精神障害について
精神障害の原因
精神障害はその原因によって「内因性」「外因性」「心因性」の3つに分類されます。まずはそれらについて解説していきます。
【内因性精神障害】
原因がはっきりとせず、先天的な要因が関わっていると考えられる精神障害
主な疾患: 統合失調症、双極性障害
【外因性精神障害】
からだに影響及ぼす脳の疾患、脳以外の器官の疾患、アルコールや薬物などの中毒を原因とする精神障害
主な疾患:アルコール依存症
【心因性精神障害】
ストレス、要求不満、危機的状況によるショックなどの心理的・社会的な要因によって引き起こされる精神障害
主な疾患:心的外傷後ストレス障害(PTSD)
ここで問題!
【問題】
アルコール依存症は、内因性精神障害に分類される。
【答え】
答えは「×」です。アルコール依存症は、外因性精神障害に分類されます。
統合失調症
統合失調症は、青年期に発症することが多く、再発を繰り返すことが特徴とされています。症状は「陽性症状」と「陰性症状」に分類されます。それではその症状について解説します。
【陽性症状】
①幻覚(幻聴や幻視)
②妄想(被害妄想など)
③させられ体験(誰かによって操られていると感じる)
【陰性症状】
①感情鈍麻(感情が失われ、何事にも無反応になる)
②意欲や自発性の低下
【統合失調症の治療】
統合失調症の治療としては
①抗精神病薬による継続的な「薬物療法」
②社会復帰を目的に日常生活における実際の場面を想定した訓練である「社会生活技能訓練(SST)」
双極性障害
双極性障害は、気分が非常に高揚した「躁状態」、意欲が激しく落ち込んだ「うつ状態」を交互に繰り返す疾患です。なお、うつ状態のみが起きる疾患は、一般的に「うつ病」と呼ばれます。それでは躁状態とうつ状態の症状について解説します。
【躁状態の症状】
①誇大妄想
②観念奔逸(次々と新しいことが思い浮かび、考えが止まらない状態)
【うつ状態の症状】
①抑うつや思考停止
②自殺念慮(自殺願望が高まった状態)
③頭痛や倦怠感などの身体症状
【双極性障害の方へのコミニケーション】
うつ状態にあるときは、どんなことに対しも悲観的になり自責の念にとらわれるようになってしまいます。コミニケーションを図るときには、安易な励ましは避け、まずはその人の感情に寄り添い、受容的な態度で接していくことが大切です。
アルコール依存症
アルコール依存症は、長期にわたる飲酒習慣とそれに伴う飲酒量の増加によって依存状態が深まり発症する中毒症状です。アルコール依存症の治療では、当事者同士が課題を共有し、お互いに支援を行う「セルフヘルプグループ」への参加が進められます。
それではアルコール依存症の症状について解説していきます。
【アルコール依存症の症状】
アルコール依存症の症状としては「注意力・判断力の低下」「消化機能の障害」「記憶障害」などからだとこころの両面に症状がみられます。
また、依存症の人が飲酒を中断するとアルコールを摂取できなくなったことによる禁断症状(離脱症状)が現れます。代表的な症状は、手足の震えや幻覚などをもたらす「振戦せん妄」です。
心的外傷後ストレス障害(PTSD )
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、災害や事故に遭遇したことにより強いショックを受け、その場面がフラッシュバックし脳裏に蘇ったり、継続的な恐怖心に囚われたりする精神障害です。緊張感によりイライラしやすくなり、寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったりする症状もみられます。
【心的外傷後ストレス障害の方への関わり】
心的外傷後ストレス障害の治療において、医師によるカウンセリングや薬物治療が実施されます。介護福祉職には「受容」「共感」「傾聴」を基本とし、その人の訴えにじっくりと耳を傾け、受け入れていく姿勢が求められます。
その他の精神障害
【不安症(不安障害)】
理由のない漠然とした不安に襲われ、パニックなどの症状を引き起こす精神障害
【強迫症(強迫性障害)】
無意味と思われる行動や、同一の行為を何度も繰り返してしまう精神障害
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