【福祉業界の未来を考えて】泉州訪相談交流会を開催
令和5年9月26日に大阪府和泉市にある人権文化センター(ゆうゆうプラザ)にて、南大阪泉州地域にある障害の分野に関わる訪問介護事業所と相談支援事業所が集まり、福祉に関わる知識や現場で活用できる情報共有などを行うことをテーマとした交流会を行いました。また、この交流会では、各事業所が現在悩んでいることについても参加者全員で意識を共有し、解決に向けていけるような取り組みを行っております。
この活動を通して、南大阪地域の福祉の質の向上や介護に携わる介護従事者の意識改革を行っていければと思います。
2024年4月障害者総合支援法改正について
来年の4月からは大きく法改正が行われます。それにより障害に関わる様々な分野の事業の考え方が見直されます。
今回取り上げた内容は、特に法改正が懸念される就労支援や放課後等デイサービスについてのお話がありました。
まずこちらの障害福祉サービスに関わる予算編成を見ていきましょう。
このデータを見る限り、障害分野でサービス費の占める割合の多い「就労支援関連」と「放課後等デイサービス」の分野が今回注目されることになりました。
今回はその中でも特に話題として捉えられた就労に関わる支援についてご紹介していきたいと思います。
就労支援で新たに創設される「就労選択支援」
すでに発表されている新たな支援として「就労選択支援」というサービスが創設されることが決定しています。
就労選択支援とは、利用者様が就労に関わる支援(就労移行支援・就労継続支援等)を利用したい場合には、住所を有する市区町村の役所の障害担当窓口まで申請を行います。申請後に「就労アセスメント」が行われます。そのアセスメントは、委託された事業所が、その利用者様に対して「どのような能力を持ち、どのような作業に適しているか」といったことを判断します。その後に一般就労が可能な場合には、ハローワークと利用者様をつなぎ、一般企業へ就職するといった流れになります。
それとは別に一般企業で就職することが難しい場合には、就労移行支援や就労継続支援に繋がれるわけです。
行政からの発表では、これにより利用者様が有する能力に適した職場の環境が整えられるという発表ですが、実際の現場感覚では、利用者様の選択の幅が狭まれ、利用しづらいサービスとして運営されていくのではないか?事業所サイドからは心配されています。
南大阪の移動支援について
この交流会では、南大阪に関わる移動支援事業についてもまとめています。移動支援事業に関しては、各市町村が予算を編成しており、独自のルールで運営しています。市町村によって「できること・できないこと」や「請求方法」なども変わってきます。そういった問題を解決するために、「移動支援市町村別一覧表」をこの交流会では作成していくことを目的としています。
そんな中、移動支援サービスを提供するにあたり、必要な書類である「移動支援計画書」の存在について皆さんはご存知でしょうか?
ある市町村ではフォーマットが設けられており、作成しておかなければならない
またまたある市町村ではフォーマットも存在せず、計画書を作成しなければならない。
またまたまたある市町村では計画書は特にいらない。
など市町村によっての判断が統一されていないのが現状です。そういった事務処理に関わる問題も、非常に重要なことです。こでは皆さんと情報を共有し、この内容についても問題解決に向けてお話しさせていただきました。
訪問介護事業所が抱える問題
泉州訪相交流会では、訪問介護事業所や計画相談支援事業所が、日頃、抱える悩みについて、参加者全員で情報共有し、問題解決を図るといった取り組みも行っております。
今回は、「参加者の悩み」と「解決できるのではないか?」といった結果をご紹介していきます。
【質問①】人材不足です。人材確保にどのような対応されていますか?
訪問介護事業所は、利用者様とヘルパーが1対1で関わるため、介護関連の仕事でも特にハードルが高い職種のように思われ、求人に悩まれている事業所が多い傾向にあります。
実際、私も知り合いの求人誌担当の方とお話ししたところ、介護の中でも訪問介護の職種に関しては、特に求人の効果が薄いとお聞きしているのは実際です。そんな中、事業所独自でどのような取り組みを行いどういった効果があったのか、ここではご紹介していきます。
≪紙媒体の求人活動とハローワーク≫
事業所で独自のポスターを作成し、店舗などに協力を得て貼ったりしていますが、今のところ効果は見られません。ハローワークで求人をかけるが、なかなか面接までたどりつかないといった声が今回、聞かれました。
≪チラシ配りを行った結果≫
訪問介護事業所で自分たちでソフトを使いデザインし、利用者様の募集を目的に作成されたチラシを対象である地域(泉州地域)のマンションや団地にチラシ配布したところ、利用者様の募集ではなく、介護職員の求人の効果があり、面接につながり、職員の確保ができました。
この作業に関しては、チラシを作成する料金と配布しなければならない人材の確保が必要です。
デザインの作成は無料で使えるソフトを利用されたようです。そのソフトは「canva」というソフトを使用したようです。このこのソフトは僕も使用していいるのですが、非常に使い勝手が良く、デザイン作成に対する知識に精通していない方でも簡単に使用できるソフトとなります。下記に参考のページを案内いたしますね。
【canva無料デザイン作成】
印刷に関してはコストがかかる部分であり、印刷会社や作成する枚数に応じて料金は変わるかと思います。また、この事業所では配布する人材に関しては、訪問介護事業所で勤める介護職員のサービスがない空き時間の業務として行っているようです。
≪登録ヘルパーさんの時給を上げる≫
この方法をとった企業では、求人誌「ぱど」を媒体として求人をかけたようです。この企業はなんと「身体介護/時給2500円」で募集したところ一回の掲載に対して面接5回といった成果があったようです。
なかなかの成果となかなかの度胸ですよね。
この地域では、最も高い時給だと思われます。確かに、インパクトが強く話を聞いたときには、自分もびっくりいたしました。
このように行政から上限が限られた報酬があっても、ヘルパーさんに還元したいという企業もあります。また、給与を上げることによってヘルパー自身のプロ意識をもって質の高いサービスを利用者様に提供してくれるのではないかという目的もあるようです。
≪職員が辞めないための福利厚生の充実≫
福利厚生を充実させることによって、企業で働く介護職員の満足度を高めるといった内容になります。
この企業では、パートタイマーの方でも、有給休暇や退職金制度等設けています。正社員に関しては様々な手当があります(健康管理手当、資格手当、休日手当、残業手当、夏季手当等)そういったものを充実させることにより、離職率の低下を目的に行っているようです。
【質問②】訪問介護の正社員は1日何件のサービスを担当しているか?
この回答に関しては、様々な回答がありました。
1時間のサービスもあれば2時間のサービスもありますし、移動支援で丸一日サービスの時もあるとの回答です。ただ、平均して「1日/3件〜6件」利用者様の自宅に訪問し、サービスを提供するとの結果でした。
【質問③】移動支援だけでのサービス提供は可能か?
≪パートタイマーならOK!正社員は特に難しい≫
先程の1日のサービス提供件数の話に関係して、移動支援だけでは、サービスを受けることが難しい事業所も多数存在するようです。と言うのも、南大阪地域の移動支援の単価は「1時間/1800円」といった報酬になり、その他事務作業等を行い、人件費を支払うと赤字になる企業も多々あるとの結果です。そういったことから移動支援だけではなく、それと同時に居宅介護(訪問して行うサービス)もサービス契約させていただくことによりサービスの契約が可能という事業所もあるようです。
これは労働基準法通りに企業が運営し、正社員の介護職員に給与(基本給+各種固定の手当で23万円の場合)を支払います。行政からいただける報酬が「1時間/1800円」と考えるとその正社員が土曜日働き、その月の所定労働日数が20日の場合で考えるとその職員に支払われる「時給が1796,875円」になります。日曜日の場合には、時給の掛け率がさらに上昇し「時給1940,625円」となります。サービスを提供すればするほど赤字になってしまうという問題が発生します。そこに事務作業として「実績記録表の管理」や「請求書の作成」「計画書の作成」も行わなければなりません。
これは市町村の予算編成にも関わる大きな問題なので、すぐに解決はできないですが、この問題により1番困るのは、余暇活動や社会参加を目的として移動支援を利用したいと希望している利用者様です。どうすればよいものかと、私たち事業所間でも悩まれる問題となっております。
≪移動支援から行動援護に≫
また、この内容が検討された時に、ある事業所の意見では、移動支援から行動援護のサービスに切り変えていただき、利用されている利用者様もいらっしゃるようです。そうすることにより報酬自体も上げることが可能ですし、加算も上乗せされます。ただし、この内容に関しては、「行動提出10点以上」の重度の知的・精神障がい者の方が対象となりますので、すべての方がこの条件に当てはまるとは言えない状態です。しかし、そういった知識を提供したり、声かけを行うのも、介護事業所の役目だと思われますので、我々自身が知っておかなければならない内容ですね。
次回の交流会のテーマは「2024年改正介護保険法について」
障害総合支援法が2024年に改正され、新たな動きがある中、介護保険法も同じく2024年に新たに法改正が行われます。
障害者の方も65歳以上になれば、介護保険法が適用され、その中でのサービスを原則、利用しなければなりません。
この交流会は、障害福祉に特化した分野の介護事業所が集まっていますが、介護保険に関する知識も関係ないとは言えません。
そういった観点もあり、介護保険法について学ぶ時間を設けます。
また、交流会で質問があった「介護事業所は売り上げはどのように立てているのか?」といった経営者目線での話もありましたが、時間間に合わず行えませんでした。次回お話しできる機会を行う予定です。
その他にも泉州地域での「移動支援計画書」の実態についてもお調べしお伝えしていければと思っております。
その他、メールで受け付けた質問や次回までに参加者の疑問や悩みなども、ここでは解決に向けてお話しできればと思います。
次回の開催日は「2023年11月28日人権文化センター4階第3研修室」にておこないます。
泉州地域で活躍する訪問介護事業所と計画相談支援事業所の皆様の参加をお待ちしております。
問い合わせ先:sensyu.housou@gmail.com
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