介護における清潔保持について大阪介護の資格の学校講師が解説
実務者研修のカリキュラムの内容にも出てくる清潔保持について今回は、介護福祉試験対策という前提をもとに徹底解説していきます。今回、解説する清潔保持は介護福祉の試験範囲では「こころとからだのしくみ」の試験範囲から出題される内容になっております。
そんな介護における入浴や清潔保持の目的は、からだを清潔な状態に保つことにあります。また、清潔にすること以外にも循環機能に働きかけることにより、皮膚の新陳代謝や発汗作用を促進することも重要な目的です。
入浴の作用
入浴には「温熱作用」「静水圧作用」「浮力作用」と言う3つの効果があります。まずはその効果について解説していきます。
入浴がもたらす3つの効果
【温熱作用】
暖かい湯につかることにより、毛細血管が拡張し、血行が促進されます。また、老廃物が除去され皮膚の清潔を保つことが可能です。
【静水圧作用】
からだにかかる水の圧力により、血液やリンパ液の循環が促進され、下肢のむくみなどを軽減します。
【浮力作用】
お風呂に入ることにより体重が軽くなり、骨や関節、筋肉への負担が和らぎます。
湯の温度による効果の違い
【湯温42℃以上】
42℃以上の高温のお湯に入った場合は、交感神経の働きが促進されます。筋肉の収縮、心拍数の増加、血圧の上昇、腸や腎臓の働きの抑制といった効果があります。
【湯温38〜48℃】
38〜48℃の中ぐらいの温度のお湯に入った効果は、副交感神経の働きが促進されます。高音の湯温の時とは逆の効果がもたらされ循環機能への負担も軽くなります。
交感神経・副交感神経に関しては違うページで詳しく解説していますので下記のページを参考にしてください。
【交感神経・副交感神経について】
入浴に配慮しなければならない状態
入浴は循環機能に与える影響が大きく、利用者様の状態によっては大きな負担となる場合も考えられます。空腹時血圧の上昇している食事の直後(食後1時間以内)は、入浴を避けるようにしましょう。また、発熱のある時も注意が必要です。
皮膚の機能
皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層で構成されており、付属機関として毛髪、皮脂腺、汗腺などがあります。皮脂腺からは皮脂、汗腺からは汗が分泌されます。また、皮膚の表面には無数の常在菌が存在し、皮脂膜という弱酸性の膜によって覆われています。
皮膚の汚れ
皮膚の汚れは垢と呼ばれるもので、古くなった角質細胞や皮脂、汗などにほこりやゴミが付着することで垢が作られます。垢が溜まると細菌の繁殖が多くなり、皮膚が刺激されることでかゆみが起こりやすくなります。
皮膚の機能
①触覚などの感覚機能としての役割
②汗の分泌や血管の収縮などによって体温を調整する役割
③汗の分泌を通じて、老廃物を排出する役割
④細菌の感染や外部からの刺激に対する防御機能の役割
⑤紫外線を吸収して、ビタミンDを産生する役割
発汗とは
汗を分泌する感染は、皮膚の酸素のうち、真皮の深部から皮下組織の間に存在します。汗腺は、「エクリン腺」「アポクリン腺」の2種類に分けることができます。
【エクリン腺】
口唇やまぶたを除く全身に分布し、手のひらなどに多い。エクリン腺からの汗は大部分が水分のため臭いは無い。発汗よる体温調節機能の役割を果たします。
【アポクリン線】
腋窩、乳輪、外陰部などに集中しています。タンパク質や脂質、糖質などを含むためアポクリン線からの汗は体臭の原因となります。
ここで問題!
【問題】
皮膚の表面はアルカリ性に保たれている。
【答え】
答えは「×」です。皮膚の表面は、皮脂膜という膜に覆われており、弱酸性に保たれています。
特殊な皮膚状況に応じた清潔方法
皮膚の機能は加齢によって低下し、乾燥して傷つきやすくなります。そのため、かゆみ、かぶれ、感染症、褥瘡など皮膚に関わる疾患が発生しやすくなります。そんな肌の状態に合わせた清潔方法も併せて覚えておきましょう。
特殊な皮膚状態に対する清潔方法
【白癬】
カビの一種である真菌を原因とする感染症です。対応方法は、湿潤環境で繁殖しやすくなるので、入浴や運動後に患部を乾燥させるようにします。
【疥癬】
ヒゼンダニを原因とする感染症で激しいかゆみが特徴的です。対応方法は、硫黄入り入浴剤が有効だが、皮膚の乾燥が強い場合には乾燥を促進させてしまうので注意が必要です。
【老人性掻痒症】
体内の水分量や皮脂の減少によってかゆみを生じる疾患です。対応方法は、皮膚を刺激しないようにぬるめのお湯で入浴したり、石鹸の使い過ぎに注意します。また、硬い素材のタオルや衣服の使用は避けます。
【かぶれ】
介護現場ではおむつの使用などがかぶれの原因となることが多い。対応方法は、かぶれた部分が濡れた場合はこすらず押さえるようにして拭き取ります。
【帯状疱疹】
水痘・帯状疱疹ウィルスの活性化によりピリピリとした痛みや帯状の赤い発疹と水泡が現れる疾患です。対応方法は、患部の血行促進を行うと痛みが和らげるので、ぬるめのお湯でシャワー浴を行います。
【褥瘡】
からだの一部分に長期にわたり圧迫されることにより、その部分の血液の流れが途絶え、皮膚が赤みをおび、やがてただれた状態になる疾患です。対応方法は、適度な体位変換を行い、軽度の場合にはこすらずに洗い流します。
【創傷】
重度の場合には、防水フィルムを貼って湿潤状態を適度に保ち、皮膚の乾燥を防ぐことにより組織の修復へ繋げます。
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