人生の最終「死」介護福祉試験範囲を大阪介護の資格の学校講師が解説
今回、解説する内容は介護福祉士国家試験の試験範囲でもある知識となります。カリキュラムでいうと「こころとからだのしくみ」の分野になります。人生の最終段階のケアに関連した内容です。人間誰でも訪れる「死」の定義や受け入れる心の段階などについて今回は解説していきたいと思います。それではみんなで介護福祉国家試験の対策頑張っていきましょう。
「死」とは
「死」とはどのような状態を示すものなのかを考えるときに3つの視点があります。「生物学的な死」「法律的な死」「臨床的な死」
という考え方です。まずはその3つの考え方について解説していきます。
生物学的な死
生物学的な死とは、すべての生理的機能が停止して、回復不可能な状態にあることをいいます。
法律的な死
医学の進歩により脳の機能が消失しても、人工呼吸器などにおいて心肺機能を維持することが可能になりました。このような状態を「法律的な死(脳死)」といいます。脳死について定めた法律としては「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」があります。この臓器移植法第6条第2項において「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された人」は、臓器移植が可能な脳死した人と判断されます。この定義はあくまで臓器移植法の中で定義された死についての捉え方になります。
臨床的な死
臨床的な死とは心臓、肺、脳の機能が不可逆的に停止した状態をいいます。具体的には次のよう死の3徴候が挙げられます。
【死の3徴候】
①心臓機能の停止「心停止」
②肺の機能の停止「自発呼吸の停止」
③脳の機能停止「瞳孔散大」
リヴィングウィルと尊厳死
死に対する考え方は人それぞれで、終末期の利用者様がどのような形で人生の最期迎えたいと考えているか?意思疎通が困難になったときに備えて書面で残すことが大切です。意思疎通が可能な時に意思表示を残すことをリビングウィルや事前指示書と呼びます。また、延命治療を行わず、自然な状態で死を迎えることを尊厳死といいます。
キューブラー・ロスによる「死」の受容
死に対する恐怖は誰もが等しく持っているので、アメリカの精神科医のキューブラー・ロスは、人が死期を迎えた時に自分の「死」を受容するまでの過程を5段階で理論化しました。この5段階関しては、必ずしも順番通りに現れるものでもなく、同時に違う段階におちいることもあります。
キューブラー・ロスによる「死」の受容5段階
【第1段階:否認】
自分が死期を迎えたことから現状を否定しようとし自己防衛する段階です
【第2段階:怒り】
「どうして自分が」という怒りや恨みの感情を抱くようになる段階です
【第3段階:取引】
祈りや良い行いをすればこの運命から逃れられると考えるようになる段階です
【第4段階:抑うつ】
死から逃れることができないことを悟り、激しい喪失感にとらわれるようになる段階です
【第5段階: 受容】
現実を受け入れて死を迎えるまで静かに過ごすようにする段階です
家族にとっての死の受容
死を受け入れるまでには、利用者様だけではなく家族も受容の過程をたどります。家族に対するケアは、死を迎える利用者様だけではなく家族も対象だということです。利用者様の死により、その家族は深い悲しみや怒りのほか食欲減退などの精神的力な意欲の低下にも関係しています
終末期から死後のからだの変化
終末期を迎える危篤状態に至るまでのからだには様々な変化が現れるようになります。それではどのような原因でどのようなからだの変化が起こるのかを解説していきます。
危篤状態に至るまでのからだの変化
【血圧や循環器系】
血圧が低下し心拍数が減少します。チアノーゼが出現し粘膜が青紫色に変化していきます。
【呼吸器系】
「ヒューヒュー」といった死前喘鳴が現れます。呼吸のリズムが不規則になり「肩呼吸」「下顎呼吸」「チェーンストークス呼吸(弱い呼吸と強い呼吸、重症になると弱い呼吸と無呼吸を繰り返す)」「死期喘鳴(喉からゴロゴロとする音)」などが現れます。
【代謝機能】
体温が低下して、脱水傾向が強まり皮膚が乾燥してきます。
【消化器系】
食事や水分の摂取量が減り、体重も減少します。
【泌尿器系】
尿量が減少してきます。
【意識状態】
傾眠状態が多くなります。
死後の身体的な変化
①体温が徐々に低下して、周囲の温度と同じようになります
②角膜が混濁し、黒目にあたる部分が濁ってきます
③死斑(皮膚が赤紫色から暗褐色に変わること)が死後20分〜30分で始まります。9〜12時間で全身に及びます
④死後硬直(筋肉が硬化して関節が動かなくなること)が、死後2〜3時間で始まり、12時間程度で、全身に及びます。この硬直30から40時間でとけ始めます
⑤自己融解(臓器の溶解)と腐敗(体内細菌による内臓分解)が始まります
ここで問題!
【問題】
終末期において死亡直前に見られるからだの変化に尿量の減少がある。
【答え】
答えは「○」です。死を目前にした人はからだの様々な機能が低下して尿量も減少します。
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