【発達障害・高次機能性・難病】介護福祉試士国家試験試験範囲を解説
介護福祉士国家試験の試験範囲でもある「障害の理解」のカリキュラムから発達障害と高次機能障害と難病について解説していきます。ポイントとしては各発達障害の特徴、高次機能障害の主な症状、主な難病の症状と対応を押さえておく必要があります。
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【介護福祉試験対策コース】
発達障害について
発達障害とは「発達障害支援法」によると「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発症するものとして政令で定めるもの」と定義されています。この定義をみると発達障害は、育て方や本人の努力によって引き起こされる障害ではないということです。
発達障害の特徴を理解するために各発達障害の特徴について解説しています。
広汎性発達障害「自閉症スペクトラム障害」
広汎性発達障害または自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群などの総称です。アメリカ精神医学会作成の「精神疾患の診断・統計マニュアル」が改定される際に、自閉症やアスペルガー症候群といった分類を含む広汎性発達障害が自閉症スペクトラム障害という名称に統合されました。また、重度の自閉症スペクトラム障害の方に「強度行動障害」といった行動がみられる時もあります。
それでは自閉症やアスペルガー症候群といった発達障害についてさらに深く解説していきます。
【自閉症の特徴】
①対人関係を上手に気づけない
②認知機能や言葉の発達に遅れがみられる
③こだわりが強く同じ行動を繰り返す(情動行動)
【アスペルガー症候群の特徴】
①認知機能や言葉の発達に遅れは見られない
②特定のものに興味が限定され、自分のペースで行動する傾向がある
【支援においての留意点】
①状況の変化に対する不安が強く見られるため、次に何を行うかを前もって具体的かつ簡潔に示しておきます。
② 1つの動作が終了してから、次の動作の指示を出します
③予定の変更があるときは、メモや絵を使って支援を行います
【強度行動障害とは】
自閉症スペクトラム障害では、「自分や他人を傷つける(自傷・他害)」「物を壊す」など、本人や周囲の人の暮らしに影響及ぼす行動が著しく高い頻度で起こる強度行動障害がみられることがあります。強度行動障害がある自閉症スペクトラム障害の方は、行動点数にもよりますが「行動援護」の対象となります。
学習障害(LD)
学習障害(LD「限局性学習症」)は、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するといった学習能力のうち、特定の能力に障害が見られるものです。全般的な知能の発達には遅れはありません。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害(ADHD「注意欠陥・多動性」)は、集中力を保つことが難しく、不注意な行動をとってしまったり、落ち着きがなく動き回ったりすることが特徴です。
2016年(平成28年)「発達障害者支援法」改正のポイント
発達障害の定義や支援のために施策を定めた「発達障害者支援法」が、支援のさらなる充実を図るために2016年(平成28年) 6月に改正されました。
その3つのポイントについて解説します。
①発達障害者の定義を、「発達障害があるもので、発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける者」へと見直した。
②基本理念として発達障害者の支援は、「社会参加の機会が確保され、社会的障壁の除去に資するように行われなければならない」などが示された
③国や都道府県が「就労機会の確保」「就労定着」のための支援に努めること。事業主が「雇用機会の確保」「雇用の安定」に努めることが定められました
高次機能障害について
高次機能障害とは、脳血管疾患や脳炎の後遺症、交通事故による脳の損傷により「記憶力」「注意力」「判断力」「言葉の理解」などに障害が現れたものです。それでは高次機能障害の症状や注意点について解説していきます。
【高次機能障害の症状】
①記憶障害:新しいことを覚えることができなくなる。「物の置き場所を忘れる」「約束を忘れる」
②注意障害:集中力が保てず単純なミスが多くなる。「同時に2つ以上のことをすると混乱する」
③遂行機能障害:状況に応じた判断ができない。「計画を立てて物事を実行することができない」
④社会的行動障害:感情のコントロールができず、興奮しやすくなる。「不適切な発言をする」
⑤半側空間無視:損傷した脳の反対側のものを認識できず見落としてしまう。
⑥失語・失行・失認:話すことや言葉の理解が難しい「失語」、着替えなど思うような動作ができない「失行」、見たり聞いたりしたことがわからない「失認」
【高次機能障害の注意点】
高次機能障害は、外見だけでは障害があることがわかりづらく、本人に自覚がないことが特徴です。そのため本人や家族の、周囲の人も含めて障害に対する理解を深め、症状の内容を把握して接することが大切です。
ここで問題!
【問題】
高次機能障害の主な症状の1つである社会的行動障害では、自分で計画を立てて物事を実行することができない。
【答え】
答えは「×」です。社会的行動障害とは、感情のコントロールができず、興奮しやすくなったり、不適切な発言をしたりしてしまうことです。
難病について
難病は2015年(平成27年) 1月に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」によって定義されました。この法律に基づき、医療費の助成を受けられる難病を「指定難病」といいます。それでは難病の定義や主な難病について紹介していきます。
難病の定義
難病法における難病の定義(第1条)では「発症の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、その疾病にかかることにより長期にわたる療養を必要とすることになるもの」とされました。
【難病法における指定難病の2つの条件】
①患者数が一定の人数(人口の0.1%程度)に達していないこと
②客観的な診断基準が確立していること
主な難病の紹介
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
【原因】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、「運動ニューロン(運動するための命令を筋肉に伝える神経)」が障害を受けることにより全身の筋力が低下していき、筋肉が痩せ衰えていく疾患です。
【症状】
主な症状として「球麻痺(延髄にある運動神経の麻痺)」により、舌や喉の動作が制限されることで、嚥下障害や構音障害がみられるようになります。また呼吸筋の萎縮によって呼吸障害が生じ、気管切開や人工呼吸器の使用、たんの吸引が必要になることもあります。
一方で四大陰性兆候として①感覚障害(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など) ②眼球運動障害③膀胱・直腸障害④褥瘡はみられずこれらの機能は保たれ痛覚などの知覚神経や記憶力も保たれます。
【対応】
症状が進行することより歩行が困難になり、寝たきりの状態になることが多く、安楽な体位を工夫するなど、少しでも負担の軽減に努めることが大切です。
ここで問題!
【問題】
筋萎縮性側索硬化症では、視力や聴力は保たれる。
【答え】
答えは「○」です。筋萎縮性側索硬化症では、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの感覚障害は見られず、能力は保たれます。
脊髄小脳変性症(SCD)
【原因】
脊髄小脳変性症(SCD)は、何らかの原因により脊髄や小脳の神経細胞が変性することにより発症します。
【症状】
特徴的な症状として「運動失調」という症状がみられます。具体的には「失調性歩行(歩行時のふらつき)」や動作時の手の震えのほか、ろれつが回らないといった言語機能障害もみられます。
【対応】
根本的な治療法は今のところありません。運動失調を緩和させる目的で、薬物療法やリハビリテーションが行われます。
後縦靭帯骨化症(OPLL)
【原因】
後縦靭帯骨化症(OPLL)は、老化によって脊柱管の中にある後縦靭帯が骨化し、脊柱管が狭くなることにより、脊髄や神経を圧迫することで発症をします。
【症状】
手足のしびれや四肢麻痺などの症状が見られるようになります。症状が進行すると歩行困難や排尿障害が現れることもあります。
【対応】
治療法としては、圧迫されている神経を保護する目的として、頸椎を固定する装具の装着や薬物療法があります。
筋ジストロフィー
【原因】
筋ジストロフィーは、骨格筋に現れる遺伝子の異常により、細胞が変性・壊死することにより発送します。いくつかの病型に分類されますが、最も代表的なものは「デュシェンヌ型」で通常は男児に限られます。
【症状】
主な症状は進行性の筋力低下と運動機能低下であり、からだを左右に振りながら歩く「動揺性歩行」がみられます。症状が進行すると、呼吸筋の障害による呼吸不全を招き、人工呼吸器が必要となる場合もあります。
【対応】
根本的な治療方法は今のところなく、副腎皮質ステロイドの処方、機能維持のためのリハビリテーション等が実施されます。
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