和泉市 実務者研修 カイゴミライズアカデミー

【介護福祉試験範囲】「居住環境の整備」を試験対策講座講師が解説

老化に伴う機能の低下に合わせて居住環境の整備は重要となります。また、居住場所ごとの環境整備のポイントや施設入所に伴う心身の負担を軽減する工夫なども介護福祉士の試験範囲に含まれる知識となります。介護福祉士国家試験のカリキュラムでは「生活支援技術」に含まれる内容となります。

また、現在カイゴミライズアカデミーではこのような知識を、受講生さんと国家試験合格を目指して勉強中です。介護福祉士国家試験対策は、下記のページまで。

【介護福祉士国家試験対策コース】

老化に伴う居住環境の留意点

住居は、生活を送る上での基盤となるものです。また、老化による心身の機能の低下などによりそれまでと同じ室内環境では「安心・安全」な生活を送ることが難しくなります。利用者の状態に適した居住環境の整備は、活動範囲を広げ自立を支援することにつながります。

老化に伴う感覚機能の低下と環境整備

【視覚の低下】

明るさや暗さへの順応力が低下するので、照明を明るめにする

【聴覚の低下】

音を聞きとりづらくなるので、防犯ベルの音量を上げ

【嗅覚の低下】

ガスの匂いを感じられず、ガス漏れに気づけない可能性もあります。また、同時に物忘れも増えることから、ガスコンロではなく電磁調理器(IH)を使用する

【触覚】

皮膚感覚が鈍ることにより、床暖房による低温火傷に気づけない場合もあるので注意する

【体温調整機能の低下】

汗をかきにくく、体内の熱を逃すのが難しい状態になっているので、室内でも熱中症に注意してエアコンの使用や水分補給に努める

居住環境整備の視点

居住環境整備は、安心・安全や使い心地のよさを考慮します。それでは居室、寝室、台所、廊下、階段、浴室、トイレといった場所ごとに環境整備のポイントを挙げていきます。

各場所ごとの環境整備のポイント

【居室・寝室】

①日当たりや風通しの良い場所を選ぶ

②換気を行う場合は2カ所以上の窓を開け直線的でスムーズな風の通り道を作る

③移動のしやすさ、家族からの孤立を防ぐため、トイレや浴室、居間の近くに部屋を設定する

④利用者や家族の負担を軽減するため、布団ではなくベッドにする

⑤ベッドの高さは端座位(ベッドに腰をかけた体位)で足底全体が床につく30〜45cm程度の高さにする。利用者が寝たきりで介助する場合は、70cm程度にする

【台所】

①調理台の高さ、シンクの深さは、利用者の状態に合わせるようにする。車いすを使用している人の場合、シンクの深さは通常より浅くして、12〜15cm程度にする

【廊下・階段】

①階段の手すりは片側だけに設置する場合、降りるときに利き手になる側に設置する

②手すりは床から75cm程度の高さにする

③階段の踏み面は24cm程度高さは16〜18cm程度にする

④転倒予防のため、床材は滑りにくい材質のものを選ぶ

⑤車いすを使用する場合、廊下の幅は85cm程度にする

足元灯(フットライト)を設置する

このほか、屋内では転倒予防としてスリッパは厳禁です。安全な導線を確保するため1〜2cm程度の段差は解消する必要があります

【浴室】

①出入り口のドアは安全を考慮し「引き戸」にする

②転倒予防のため、洗い場や浴室内は滑り止めマットを使用する

③浴槽の出入りに使用するシャワーチェアは、浴槽の縁の座面の高さに合わせて使用する

④浴槽はまたぎやすいよう、洗い場から40〜45程度の高さにす

【トイレ】

①事故があった場合に救助しやすいよう、ドアは「引き戸」外開き」にする

②縦手すりは、洋式便器の先端より20〜30cm程度前方

③片麻痺の人の場合は手すりは、健側に設置する

④手すりの握り部分の直径は、28〜32mm程度にする

⑤照明は、就寝時の寝室よりも明るくする

⑥横手すりは、洋式便器の座面から30cm程度の高さに設置する

L字型手すりが理想

⑧姿勢の保ちやすさ、負担の軽減を考慮し、洋式便器が望ましい

ここで問題!

【問題】

高齢者にとって安全で使いやすい扉の工夫として、トイレの扉は内開きにする。

【答え】

答えは「×」です。トイレのドアは、事故があった場合に救助しやすいよう「引き戸」または「外開き」にするのが望ましい。

認知症の方の居室の環境

認知症の人などに多く見られることですが、施設への入所などによって環境が変わると変化に対応することができず症状の悪化を招く場合があります。そのため居住環境が変わっても、出来る限りそれまでの暮らしを保てるように配慮することが求められます。例えば、利用者の居室に使い慣れた家具や思い出の品を持ち込む事は、なじみのある生活空間作りにつながります。

また、ユニットケアや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)のように利用者が共同生活を送る施設では、利用者一人ひとりに個室を設け、家具なども利用者ごとに異なるものを使用するようにし個別性を大にします。これは利用者のプライバシーを守るとともに、その人だけの生活空間を確保するためのものでもあります。環境だけではなく顔なじみの介護職員が配置出来るように配慮することも大切です。

住宅改修について

住宅改修は、利用者の居宅を改築して、バリアフリー化を図るものです。要介護者、要支援者を対象としたサービスとして介護保険制度の保険給付の1つに含まれています。介護保険制度に規定される住宅改修は、次の6種類で、20万円を限度に在宅改修費が支給されます。※介護保険における住宅改修は、原則として1回限りですが、転居介護度3以上がった場合には再度、支給対象と認められます

介護保険制度による住宅改修日の支給対象

①手すりの取り付け(取り外し可能な手すりは含まない)

段差の解消

③滑りの防止や移動の円滑化のための床材の変更

引き戸や外開きへの扉の取り替え

洋式便器等への便器の取り替え(取り外し可能な便器等は含まない)

⑥その他、①〜⑤の改修に付帯して必要な住宅改修

バリアフリー

バリアフリーとは、高齢者や障害者が社会生活を送る上で、障壁となるもの=バリア」を取り除くことです。この場合の障壁には、物理的な障壁だけでなく、「心理面」「制度面」「情報面」の障壁も含まれます。

ユニバーサルデザイン

バリアフリーの考え方を発展させ、すべての人にとって使いやすいデザインや設計を追求する考え方を「ユニバーサルデザイン」といいます。ユニバーサルデザインは、次の7原則によって成り立っています。

【ユニバーサルデザインの7原則】

①どんな人でも公平に使えること(公平性)

②柔軟に使用できること(自由度)

③使い方が簡単でわかりやすいこと(単純性)

④必要な情報がすぐにわかること(わかりやすさ)

⑤うっかりしたミスが危険につながらないこと(安全性)

⑥少ない力で効率的に、楽に使えること(身体的負担の軽減)

⑦利用する十分な大きさと空間を確保すること(スペースの確保)

« 前のページに戻る