【介護福祉試験対策】「身じたく」について大阪介護の学校講師が解説
介護福祉試験対策として身じたくに向けた意義や目的、口腔ケアなどについてここでは解説していきます。介護福祉士国家試験のカリキュラムでは「生活支援技術」に含まれる内容となります。生活支援技術は26問が出題され国家試験の中でも1番問題数も多く、点数の取りやすい項目となりますのでしっかりと勉強しておきましょう。
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身じたくとは
「身じたく」を整える事は洗面、整髪、爪の手入れ、化粧などによって身だしなみを整えることを指します。
身じたくを整えることによって期待できる効果には、色々とあります。
①洗面や整髪などを習慣的に行い生活のリズムを作る。
②身支度を整えることにより他者とコミュニケーションを図ったり意欲の向上につながる。
など様々な効果があることを理解し、利用者に関わることが介護福祉職として必要です。
それでは具体的な身じたくの内容について次に解説していきます。
整容について
整容とは、姿や形を整えることをいいます。ここでは洗面、整髪、耳の手入れ、鼻の手入れ、ヒゲの手入れ、爪の手入れ、化粧についての整容の介助のポイント解説していきます。
洗面のポイント
①顔の汚れを除去することにより爽快感を得られ、血流の促進にもつながる
②できる限り利用者自身の手で拭いてもらう。介助が必要な場合は介護福祉職が清拭を行う
③顔の清拭は「目→額→鼻→頬→口→下顎→耳→ 首」の順番で拭きます。
④目を拭くときは目頭から目尻に向かって拭きます。その際、一度拭いた面では再度、拭かないように気をつける
整髪のポイント
①頭皮の血行促進にもつながるので、しっかりブラッシングを行う
②できる限り利用者自身の手で整髪を行ってもらう。関節の可動域に障害があり難しい場合は「太柄ブラシ」「長柄ブラシ」などの用具も活用する
耳の手入れのポイント
①耳の手入れは綿棒を使用する。入り口から目に見える1.5cm程度(外耳)までにとどめる
②耳垢が乾燥している場合は、水やアルコールで湿らせた綿棒で取る。
③耳垢塞栓によって取りにくい場合は、無理に行わず医師に相談をする
鼻の手入れのポイント
①鼻毛は、外部から入り込む異物を防ぐ役割を果たしているので、伸びているときは抜くのではなく、伸びた分を切るようにする
②鼻汁は、外部から入り込んだ異物を除去する役割を果たしている。鼻をかむときは片方ずつ行い、難しい場合は綿棒などを使用する
ひげの手入れのポイント
①皮膚に電気カミソリを軽く当てて皮膚に対して直角に沿っていく。また、ヒゲの流れに逆らって剃る
爪の手入れのポイント
①介護福祉職が行うことが出来る爪の手入れは「爪そのものの異常や爪周囲の皮膚の化膿・炎症がなく、糖尿病などによる専門的な管理が必要でない場合」と認められています
②爪の手入れを怠ると巻き爪や爪白癬が引き起こされる
③高齢者の爪は割れやすいので、入浴後など爪が柔らかくなっている状態の時に少しずつ切る
化粧のポイント
①化粧をする事は、意欲や残存機能の向上につながる。本人の生活歴を踏まえて、意向を確認しながら適度に進め、出来る限り利用者自身の手で行ってもらう
口腔ケアについて
口腔ケアを行う事は口腔内を清潔な状態にします。口腔ケアの目的として①虫歯や歯周病などの疾患の予防②誤嚥性肺炎の予防③唾液の分泌による自浄作用の促進④口臭の除去などが期待されます。そのため口腔ケアは、口腔からの食事摂取の有無にかかわらず実施する必要があります。
口腔ケアの方法
口腔ケアには、利用者の状態に合わせて①ブラッシング②うがい③口腔清拭の3つの方法があります。それではその内容について解説していきます。
【ブラッシングのポイント】
①歯垢を取り除く目的として最も効果がある
②歯ブラシは、粘膜を傷つけないように「ブラシの部分が小さく」「柔らかいタイプ」のものを選ぶ
③うがいが可能ならブラッシングの前に行う
【うがいのポイント】
①主に口腔内の食物残渣を取り除くために行われる
②うがいの仕方として「ガラガラ」よりも「ブクブク」の方が口腔ケアの効果がある
【口腔清拭のポイント】
①綿棒やガーゼ、スポンジブラシなどにより清拭を行う
②主に口腔内の細菌を取り除くために行われる
③舌の清拭は、奥から手前に向かって行う
義歯の手入れ
【総義歯の外し方と装着】
《外し方》
総義歯を外すときは下顎から行います。下顎は前歯の部分をつまんで後方を上げるように外し、上顎は逆に後方を下げるようにし外します。その後、回転させて口腔内から出します
《装着》
装着するときは上顎からおこないます。総義歯は回転させて口腔内に入れて装着します
義歯の洗浄
義歯は、通常の歯ブラシよりも硬い専用の歯ブラシを使って流水でおこないます。歯磨き粉や熱湯を使用すると義歯の摩耗や変形を招くので気をつけてください。
義歯の保管
義歯は乾燥しないように、容器の中に水を入れてその中で保管します。その後、洗浄剤を入れると洗浄を行うことも可能です
ベッド上での口腔ケア
ベッドをギャッチアップすることが可能なら上半身を起こして口腔ケアを行います。難しい場合は、側臥位で口腔ケアを実施します。またうがいのため「ガーグルベースン」を利用します。
片麻痺のある方の口腔ケア
麻痺のある側に食物残渣が残りやすいので麻痺側のケアが特に重要となります。
経管栄養を行っている方の口腔ケア
口腔ケアの刺激によって嘔吐などを引き起こす可能性があるので、経管栄養終了後、しばらく時間をおいてから実施します。体位は、誤嚥を防止するために半座位(ファーラー位)にして、実際のケアにあたっては口腔用スポンジブラシやガーゼなどを使用し、口腔内を湿らせる「口腔清拭」を行います。
衣服の着脱
衣服は、利用者の個性や好みを反映できるものです。衣服を着替えることにより、生活の中にメリハリをつけることができます。またその利用者によって使いやすい、着脱しやすい服を選ぶことも重要です。それでは着脱介助の留意点と衣服の選び方について解説いたします。
片麻痺のある利用者の着脱介助
原則、「脱健着地患(健側から脱ぎ、患側から着る)」を行い更衣介助を行います。
片麻痺のある利用者の衣服の選び方
①袖口の穴と肩幅が広いものが適切です。
②寝たきりや全介助の利用者などには臥床した状態で着脱介助がしやすい「前開きの衣服」を選びます。
③ボタンは大きめのもの、マグネット式の物を選ぶ
④ズボンは伸び縮みしやすいものにし、紐で縛るタイプは避ける
その他、考慮が必要な更衣介助のポイント
【認知症の利用者の場合】
症状の進行に伴い、周りの人と同じように季節を認識できず、季節に合った衣服を選ぶことが難しくなるケースがあります。
夏場に厚着をすると熱中症などを引き起こす恐れもあるので、利用者自身が自然な流れで衣服を選び着替えができるよう促す対応が大切です。
【実行機能障害のある利用者の場合】
実行機能障害は、認知症などにより物事を計画通りに実行することが難しくなるものです。どのような手順で行為を行えば良いのか分からない状態のため、介護福祉職がジェスチャーなどの動作で頻度を示し、更衣を促していくことが適切です。
【着衣失行のある利用者の場合】
着衣失行とは、失行の1つで、認知症や高次機能障害などにより衣服の前後、左右を間違い思い通りに衣服を着ることができなくなるものです。利用者の状態に応じて、衣服の前後や左右に印をつけるなどして、行為を見守りながら練習するようにします。
【脊椎損傷のある利用者の場合】
事故などを原因とした脊髄損傷では、脊髄の程度によって障害の現れ方が異なります。例えば第6頸髄節までの残存機能の場合、肘を伸ばすことはできませんが、曲げる事は可能です。一方で、手指には麻痺がみられます。
麻痺があることからボタンなどの使用は難しい状態です。上着は伸縮性のある「かぶりのタイプ」を選び、更衣の際にはベッドのギャッチアップなどで上半身を起こすようにします。また、ズボンの更衣は仰臥位などで行うようします。靴下の上部には指をかけて引き上げためのループをつけるのが適切です。
ここで問題!
【問題】
介護を必要とする高齢者の衣服と、その支援として、左片麻痺がある場合は、左半身から脱ぐように勧める。
【答え】
答えは「×」です。脱健着患の原則に従い、左片麻痺がある場合は、右半身から脱ぐように勧めます
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