和泉市 実務者研修 カイゴミライズアカデミー

【自立に向けた移動介護】介護福祉士試験範囲を大阪介護の学校講師が解説

移動は、食事や入浴、排泄など、日常の様々な動作や活動を行う上での、基本となる行為です。普段、何気なく行っている立つ・座る・姿勢を変えるといった動作も移動の中に含まれます。

移動が可能になれば、活動範囲や生活圏の広がりも考えられ、自発的な物事に取り組もうという意欲がさらに高まることも期待できます。利用者の状態に応じて福祉用具の活用も検討しながら自立につなげるための支援を行っていくことが求められます。それでは移動する際の介護の基本である「ボディーメカニクス」や「体位の種類」「移動介助」について解説していきます。

この内容は介護福祉士国家試験のカリキュラムでは「生活支援技術」の範囲となります。

現在、カイゴミライズアカデミーでは介護福祉試験対策を開講し、受講生さん達と猛勉強中です。詳しい内容は下記のページまで。

【介護福祉試験対策コース】

ボディーメカニクス

ボディーメカニクスとは、骨格や筋肉の動きが相互にどのような影響を与え合っているのかを踏まえて、負担の少ない動作や姿勢について分析し技術を展開します。ボディーメカニクスの基本として、次の原則を理解しましょう。

ボディーメカニクスの原則

①支持基底面積を広くとり、重心を低くする

②利用者に重心を近づける

③からだを捻らず肩と腰を平行に保ち、足先は移動する方向に向ける

④大きな筋群を活用して、負担を少なくする

⑤てこの原理を使い、利用者のからだを移動させる

⑥利用者のからだを小さく中心にまとめ、ベッドの表面との摩擦を小さくする

⑦持ち上げないで水平に引くように移動する

体位の種類と体位変換

体位の種類

体位変換は、寝たきりの状態が続いている方の褥瘡予防や、利用者に安息をもたらすために行われます。体位変換はおおよそ2時間おきに実施するようにします。それでは次にどのような体位があるか種類を説明いたします。

【仰臥位】

仰向けの体位です。体位の中でも支持基底面が1番多く安定している 姿勢です。

【側臥位】

横向きの体位です。からだの左右のどちらかを下にします。

【腹臥位】

うつぶせの体位です。頭部は負担のない状態で横に向けます。

【半座位(ファーラー位)】

頭部と上半身を45度に起こした体位です。食事の時などに用いられます。

【端座位】

ベッドの端に腰をかけた体位です。立位や車いすへの移乗に向けた準備段階の姿勢です。

【起座位】

上半身を90度に起こし、テーブルの上に置いたクッションなどを抱えて前かがみになった体位です。心疾患や呼吸器疾患のある人の負担を和らげる効果があります。

移動時の介助

端座位から立位に向けた介助

片麻痺のある利用者の立ち上がり(立位)を介助する場合、介助者は利用者の転倒などを防ぐために、①麻痺側(患側)に立ちます。双方にとって安全で安心な介護を行うため介助を始める前に、②介助の内容について説明し同意を得ます。③利用者には支持基底面積を広くとり、足底をしっかりと床につけて、④ベッドに浅く腰をかけてもらいます。そして、⑤踵を引き、膝に手を当てて前かがみの姿勢から、からだの重心を前方に傾け、腰がベッドから浮いたところで立ち上がるように促します。※介助者は利用者の麻痺側の膝に手を当てて膝折れ防止を行う。

仰臥位から側臥位への体位変換(片麻痺のある場合)

例えば、右片麻痺の利用者を左側臥位にする場合、ベッド中央で左側臥位を取れるように、①利用者を右側に水平移動させます。②

利用者の体を小さくまとめ膝→腰→肩の順に、側臥位へと体位変換します。

この時に枕から頭が落ちないように枕は側臥位にする前に移動する側に寄せておくのが適切です。

歩行の介助(片麻痺のある場合)

杖を使用することにより支持基底面積が広がり、歩行の安定につながります。杖の握りの高さは大腿骨の付け根の外側の突き出た「大転子部」のあたりが適切です。それでは平地や階段などで介助方法が違いますので次に解説していきます。

【平地での杖歩行】

まず杖歩行には「2動作歩行」「3動作歩行」があります。

2動作歩行は3動作歩行よりも速く歩行ができます。しかし、3動作歩行の方が2動作歩行よりも安定性があります。介助が必要な場合、利用者の麻痺側(患測)のやや後方の位置から支援を行います。それでは2動作歩行と3動作歩行の手順を説明します。

《2動作歩行》

杖と患測を同時に出す→ ②健側を出して足を揃える

《3動作歩行》

を出す→ ②患側を出す→ ③健側を出して足を揃える

【階段での杖歩行】

階段を上り下りする場合は杖歩行の手順が異なります。

《階段を上る時》

を出す→ ②健側を出す→ ③患側の足を引き上げて揃える

《階段を下りる時》

を出す→ ②患側を出す→ ③健側を出して足を揃える

歩行の介助(視覚障害のある人)

視覚障害のある方の歩行介助として介護者の立ち位置は利用者の斜め前」の位置に立ち、「肘の少し上」をつかんでもらうようにします。利用者が白杖を使用している場合は、白杖を持つ手と反対側に立って誘導をします。それでは視覚障害者のある人の誘導方法について次に解説していきます。

【視覚障害者のある方の誘導方法】

①電車やバスの乗り降りは介護者が先に降りる

②自動車の場合は、利用者が先に乗り介助者が先に降りる

③駅のホームの点字ブロックは、安全のためその内側に誘導するようにする

④エスカレーターの乗り降りは、介助者と利用者が同時に行う

⑤階段の乗り降りは、一旦停止し状況を説明してから行う

⑥利用者から一時離れる時は、柱や壁など触れるもののある位置まで誘導し、空間に放置しない

車いすの移動介助

車いすの介助では、まず車いすに異常がないかを点検する事はないです。点検する箇所としては3つあります①ブレーキはしっかりかかるか②駆動輪(後輪)の空気が抜けていないか③キャスター(前輪)が外れていないかをチェックします。

【場面ごとの車いすの介助ポイント】

《端座位から車いすへの移乗》

①利用者の健側、ベッドに対して20〜45度の位置に車いすを配置する

②スライディングボードを活用し、臀部を滑らせて移乗させる事も可能

③移乗した後は足がフットサポートに乗っていることを確認する

《段差や下り坂での介助》

①段差を上る時は「前向き」、降りるときは「後ろ向き」で移動する

②下り坂は後方を確認しながら後ろ向きで移動する

《エスカレーターやエレベーターでの介助》

①エスカレーターは上る時は「前向き」、降りるときは後ろ向き」で移動する

②エレベーターは乗る時は「後ろ向き」、降りるときは「前向き」で起動する

《砂利道・踏切での介助》

キャスターを浮かせて移動する

歩行のための福祉用具

歩行は、移動に欠かせない手段であり、思うような歩行ができない方でも、福祉用具を活用することにより能力が補われ、移動範囲を広げることができます。

それではどのような歩行を介助するための福祉用具があるのか紹介します。

【T字杖】

比較的、歩行の安定している人が使う杖

【多点杖】

他の杖と比べ接地面が広く、支持基底面積があるため安定している杖

【ロフストランドクラッチ】

前腕を固定できるため、握力の弱い人に適している杖

【プラットホームクラッチ】

関節リウマチなどで手指・手関節に負荷をかけれない方に適している杖

【歩行器】

両手を使い、4脚の用具を動かして移動する物で杖よりも安定性が高い

【歩行車】

4つの車輪が付いており、押して動かせる用具。杖歩行よりも安定して移動ができる

【シルバーカー】

足元の不安定な人が両手で押して使用し移動する。荷物入れや休憩用のイスとして活用できる

【ウォーカーケイン(歩行器型杖)】

片手で操作できる杖と歩行器の中間にあるような用具。歩行が不安定な人に適している

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