和泉市 実務者研修 カイゴミライズアカデミー

【食事介助】介護福祉士の試験範囲を国家試験対策講座の講師が解説

食事とは、栄養素を摂取し、健康なからだを保っています。それと同時に楽しみを感じられる行為でもあります。今回の投稿では「食事介助の方法」について解説していきます。

この内容は介護福祉試験対策試験範囲でもありカリキュラムでは生活支援技術」に含まれる内容となっております。現在、カイゴミライズアカデミーでは介護福祉士国家試験対策コースを開講中です。詳しくは下記のページまで。

【介護福祉試験対策コース※オンライン受講で全国どこからでも参加可能】

それでは食事介助について解説していきます。

基本的な食事介助の方法

食事前の支援

食事は出来る限り利用者の居室ではなく、食堂で取るようにします。これは、他の利用者との交流や、気分転換を促すためでもあります。このように普段、寝る場所と食事をとる場所を分けることを「寝食分離」といいます。

また、食事の前に排泄を済ませることにより、落ち着いた状態で食事を迎えられるようにします。利用者が座位で食事を取れる場合、その姿勢にもいくつか次の注意点があります。

食事の姿勢(座位)の注意点

①テーブルは、肘が楽に乗り、腕が自由に動かせるの高さ

②テーブルとからだの間隔は、拳1つぶんあげる

③やや前かがみになって顎を引く

④いすに深く腰をかけて、床に足底をつける

食事中の支援

①食事は利用者に向けて並べ、介護者は利用者の目線の高さに合わせて介護を行います。ここで、献立の内容についても説明しておきます。

②食事に入る前に、お茶や汁物で口の中を湿らせてもらいます。これにより唾液の分泌を促し、口の中でスムーズに食物を通過させ飲み込みやすくします。

③主食(米、パンなど)、主菜(肉、魚など)、副菜(野菜など)を交互にバランスよく食べてもらいます。

食後の支援

食事を終えたら、お茶などで口をすすいでもらいます。体調確認し、口腔ケアを行います。食後は誤嚥を防ぐためにもすぐには横にならず、30分から1時間程、座位などの姿勢をとり、安静を保ってもらいます。

利用者の状態に応じた食事介助

視覚障害者のある利用者への食事介助

食べ物がどのように並べられているのか伝わるようにクロックポジション」を活用します。クロックポジションは、食べ物の位置を時計の文字盤に例えて説明する方法です。

例えば「7時の方向にご飯があります」「5時の方向に味噌汁があります」などと説明します。

片麻痺がある利用者への食事介助

片麻痺があると、食事中に麻痺側にからだが傾いて食べたものがこぼれてしまったりするので、クッションで姿勢を安定させます。

また、麻痺側に食物残渣が溜まりやすくなったりしますので、麻痺側をしっかり確認できるよう健側から食事介助を行います。

認知症のある利用者への食事介助

認知症のある利用者は失行のために、箸やスプーンの使い方がわからなくなってしまうことがあります。そうしたときには、動作の誘導するようにします。

また、記憶障害によって食べたことを忘れて、食べ過ぎてしまうこともあります。こういうときには小分けにして食べてもらうことで、食べ過ぎを防ぐこともできます。

構音障害のある利用者への食事介助

構音障害は、発語に関わる器官の動きが障害されることで、正確な発声・発音が難しくなる障害です。誤嚥防止のためにも食事中に不必要に話しかけたりせずメニューの説明程度の声かけに留めて、食べることに集中してもらうことが大切です。

嚥下障害のある利用者への食事介助

嚥下とは食べ物を飲み込む動作のことをいいます。加齢などを原因として、嚥下機能が低下すると誤嚥するリスクが高くなります。嚥下障害のある利用者には次のような留意点が必要です。

【嚥下障害のある利用者に対する介護の留意点】

①食事前に嚥下体操を行う。※嚥下体操とは、嚥下に関わる顔や首の筋肉を動かし、誤嚥の予防や口腔機能の維持・回復を目的とした体操

②必ず見守りを行い、1口の量を少なめにする

③食べ物はその食べ物に適した温度で提供し、体温よりも少し冷たいか暖かくする

④食べ物は口腔の前のほうに置く。食べ物を口に入れたら口唇を閉じるように声かけをする

⑤顎が上がらないよう、利用者の下からスプーンなどで口元に運ぶ

【嚥下しやすい食べ物・誤嚥しやすい食べ物】

《嚥下しやすい食べ物》

プリン、豆腐、ゼリー、ヨーグルト、とろみのあるもの、あんかけ、お粥

《誤嚥しやすい食べ物》

水分、口の中にくっつきやすいもの(餅、ワカメ、海苔、レタス、ほうれん草など)、パサパサしたもの(パン、サツマイモなど)、スポンジ状の食品(カステラ、高野豆腐など)※きざみ食は咀嚼機能が低下している方には有効ですが、嚥下機能が低下している方には誤嚥を招く恐れがあります

誤嚥への対応方法

食事中に「むせる」「咳をする」「口から食物がこぼれる」「水分の飲み込みが悪い」「チョークサイン(窒息したときに自分のノドを掴む動作)」がみられるときに、気管に入ってしまった異物を取り除くためには応急処置を行う必要があります。

異物を除去するための応急処置

【背部叩打法】

利用者を後から手で背部から支え、もう一方の手の付け根の部分で、左右の肩甲骨の中間部分を強く叩く方法。側臥位で行うときは、利用者のからだを介護福祉職のほうに向けて実施します。

《対象者が乳児の場合》

介護福祉職の片腕に乳児をうつぶせに乗せ、手のひらで乳児の顎を支え、頭部をからだより低く保ちます。もう一方の手の付け根の部分で、乳児の背中の中央部分を数回強く叩く

【ハイムリック法(腹部突き上げ法)】

利用者を後部から抱きかかえ、握りこぶしを作った手をもう一方の手で握り、へそとみぞおちの中間部分から手前情報へ圧迫するように月上げる方法です。主に立位や座位でおこないます。乳児や妊婦には実施しない

脱水予防のための支援

脱水とは、下痢や発熱、嘔吐などによって、体内の水分量や電解質(ナトリウムなど)の量が減少した状態をいいます。

高齢者の場合、体内の水分量が若い頃と比べて普段から減少しています。また、喉の渇きにも気づきにくくなっているため、口渇感を覚えて自発的に水分を摂取しようとすることも少なくなっています。こうした要因からも高齢者は脱水状態に陥りやすくなっています。脱水を予防するためには、こまめな水分摂取が重要です。利用者に脱水の兆候が見られたら、脱水予防に適した次の飲食物を進めるようにしましょう。

脱水時にみられる症状

「食欲の低下」「尿量の減少」「皮膚や舌の感想」「活動性の低下」「めまいや立ちくらみ」「発熱」

脱水予防に適した飲食物・適していない飲食物

【脱水予防に適した飲食物】

経口補水液、スポーツドリンク、ほうじ茶、味噌汁、ゼリー、水分を多く含む果物や野菜※この中でも経口補水液が最も適している

【適していない飲食物】

尿量を増加させるカフェインを含む飲料(コーヒー、緑茶など)、アルコール類(ビールなど)

加齢に伴う身体機能の変化に対応した食事内容

味覚の低下

加齢によって、味に対する感受性が低下します。特に塩味が低下します。そのため濃い味付けを好むようになるが、調味料の対応は栄養バランスの偏りや血圧の上昇を招きます。

《対応方法》

酸味やだし、薬味を聞かせたり、香辛料を使ったりして、味覚を補うようにします。味噌汁などは具を多くして出汁をとります。

唾液分泌の低下

加齢により唾液腺の機能低下や口周りの筋肉の衰えにより咀嚼力の低下を原因として、唾液分泌量が減少します。

《対応方法》

食べ物を噛む回数を多くして、唾液の分泌量を増やす。主食は、唾液を吸収しやすいパンなどよりも、唾液を吸収しにくい米などの方が良い。咀嚼力の低下に対しては、小さく切ったり煮込んだりするなど、食べやすくする工夫を考えます。

【腸の蠕動運動の低下】

腸が動いていて、便を大腸から押し出す運動「蠕動運動」が低下して便秘を招きます。

《対応方法》

整腸作用のある乳酸菌や、根菜類などの食物繊維を多く含む食品を摂取します。

ここで問題!

【問題】

唾液分泌の低下に対してはパンを主食にする。

【答え】

答えは「×」です。唾液を吸収しやすいパンなどよりも、唾液を吸収しにくい米などが適しています。

« 前のページに戻る