【介護福祉試験対策】「入浴と清潔保持」について解説します
今回、解説させていただく内容は、介護福祉士国家試験の試験範囲でもある「入浴と清潔保持」の介護について触れていきます。「入浴介助の方法」や「疾患による入浴の注意点」などもについて学んでいただければと思います。この内容は国家試験のカリキュラムでは「生活支援技術」に含まれる内容となっています。
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基本的な入浴介助の方法
入浴前の支援
【体調確認】
入浴は利用者のからだに様々な効果をもたらします。そうした効果がからだの負担となる場合もあるので、入浴前には必ず利用者の体調や皮膚の状態を確認するようにします。
【入浴のタイミング】
貧血や消化機能の低下を招かないように空腹時や食事の直後(食後1時間以内)は、入浴を避けます。
また、入浴による温熱作用により、体内の老廃物が排出されやすくなるため、入浴前にはトイレに誘導し、脱水予防のために水分補給を行いましょう。
【入浴に関わる環境調整】
「衣服の着脱を行う脱衣室」「入浴を行う浴室」「入浴前後のトイレ」「利用者の居室」は、温度差を小さくし、22度程度に保つようにします。温度下がると血管の収縮・拡張によって血圧の上昇や低下を招き、心筋梗塞などを引き起こす「ヒートショック」と呼ばれる現象が起こるリスクにもなります。
湯温は、高すぎず低すぎず、高くても40℃程度に設定します。入浴前に介助者が自分の手でお湯の温度を確かめる事を忘れないようにしましょう。
入浴中の支援
入浴時間は、からだへの負担を考慮して10〜15分程度に届きます。そのうち湯に浸かっている時間は5分程度にします。
湯に浸かる時は、浮力作用によって利用者のからだが浮きやすくなっているので、バランスを崩さないように注意してください。また、浴室内での転倒にも注意を行います。
入浴後の支援
入浴後は、気化熱(液体が気体に変わるときに周囲の熱を吸収すること)で体温が奪われるため、すぐにからだの水分を拭き取るようにします。利用者の体調やからだの状態を確認し、着脱を終えてから水分の補給を行います。その後、体力回復のためにしばらく安静に過ごしてもらいます。
利用者の状態に応じた入浴介助
片麻痺のある利用者への介助
片麻痺のある利用者には、安全のために浴槽には健側から入ってもらうようにします。必要時にはバスボードの使用も検討しましょう。
介助を行うときは患側から行います。また、浴室の出入り口に段差がある場合は健側から上がり、患側から降りてもらいます。
高血圧や心疾患がある利用者への介助
高血圧や心疾患なる利用者には、血圧の上昇や心臓への負担を和らげるため、湯温は37〜39℃程度のぬるめにします。また、浴槽の湯は心臓より低くする必要があります。
老人性掻痒症のある利用者への介助
老人性掻痒症のある利用者には、かゆみの原因にならないように弱酸性の石鹸でからだを洗います。ブラシなのでこすりすぎないように気をつけます。入浴剤も硫黄を含んだものなど刺激になるようなものは避けます。
入浴後は、皮膚が乾燥する前に保湿剤を使用し、着替えの衣服も皮膚への刺激が少ない木綿素材などを選ぶようにしましょう。
その他、注意が必要な利用者への支援
【植え込み式ペースメーカーの利用者】
入浴時間を短めにすれば、装着中でもお湯に浸かれます
【血液透析の利用者】
体力を消耗し、針を刺した部位からの感染や出血の可能性もあるため透析直後の入浴は控えます
【酸素療法の利用者】
入浴の影響で酸素の消費が多くなるため、カニューレをつけたまま入浴します
【ストーマの利用者】
装着の有無にかかわらず入浴ができます
入浴以外の清潔保持のための方法
シャワー浴
シャワー浴では、入浴よりからだへの負担を和らげるといったメリットはありますが、からだの熱は冷めやすくなるため湯温を入浴時(40度程度)より、1〜2℃高く設定することが大切です。
【シャワー浴の注意点】
①湯温は介助者の手で確かめる
②心臓への負担を和らげるため末端から中心部へシャワーをかける
③気化熱により体温が奪われるため脱衣室に移動する前に乾いたタオルですぐに水分を拭き取る
洗髪
洗髪には、頭皮の刺激によって血行促進する働きがあります。洗髪前によくブラッシングをして、介助者の手でシャンプーを泡立ててから、指の腹でやさしくマッサージするように洗います。
【洗い流すときの注意点】
①ベッドで洗髪する時は先にシャンプーの泡をタオルで拭き取り、その後少量の湯で洗い流す
②ドライヤーは、火傷を防ぐために頭皮から20cm以上離して同じ場所に当てないようにする
手浴・足浴
手浴は手や指を、足浴は膝から下の部分を湯につけて清潔を保つ方法です。湯につけてマッサージを行うことで、血行が促進され、拘縮の予防にもつながります。また、足浴には全身の爽快感を得られることで安眠を促す効果もあります。そのため手浴と足浴は季節を問わず行います。
【手浴と足浴の注意点】
①手浴・足浴ともに端座位で行うことが望ましい、難しい場合は仰臥位で膝を曲げた状態で行います
②湯温は39℃程度にする
③湯につかる時間は10〜15分程度にする
④石鹸などを使いながら手の先や足の先まで丁寧に洗う
⑤洗い終わったらタオルで指の間までしっかりと水分を拭き取る
陰部洗浄
陰部は、排泄物や分泌物によって最も汚れやすく、感染を起こしやすい部位です。拭く時は37〜39℃のぬるめのお湯にします。女性の場合は「前から後(恥骨から肛門)」に向かって拭きます。また、男性の場合は亀頭や睾丸の汚れに注意して、シワを伸ばしながら拭きます。
陰部洗浄時には、利用者の羞恥心やプライバシーに配慮して、カーテンのある場所を選んだり、陰部にタオルをかけたりし、肌の露出を少なくするようにします。
全身清拭
全身清拭は、蒸しタオルによってからだ全体の清潔を保つ方法です。清拭による皮膚ほの刺激には、血行を促進させ、褥瘡などを予防する効果があります。湯温は、清拭を行っている間に冷めていくことと、血行を促進のために55〜60℃に設定します。
【清拭の注意点】
①からだの末端から中心部に向かって清拭を行います
②顔は「目→額→鼻→ 頬 →口→下顎→耳→ 首」の順に拭きます
③目を拭くときは「目頭から目尻」に向かって拭きます
④顔を拭いた後、からだを拭いていきます。順番は「上肢→胸部→腹部→ 背部→下肢→陰部」の順で拭いていきます
⑤清拭を行いながら、皮膚についた水分はその都度、乾いたタオルで拭き取ります
⑥褥瘡部分は清拭をしないようにする
ここで問題!
【問題】
全身清拭の介護では、40度のお湯を準備する。
【答え】
答えは「×」です。清拭を行っている間にからだが冷めていくことや血行促進の効果も考慮し、湯温は55〜60℃にする
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