和泉市 実務者研修 カイゴミライズアカデミー

【介護福祉士試験対策講座の講師が解説】排泄の介護について

ここでは介護福祉士国家試験の試験範囲でもある「排泄介護の基本となる知識や技術」また「利用者の状態に応じた排泄の介助」について解説していきます。国家試験のカリキュラムでは「生活支援技術」に含まれる内容となります。

現在、カイゴミライズアカデミーではこのような知識を受講生さん達と共有し、介護福祉士国家試験合格を目指して勉強中です。介護福祉士国家試験対策の詳細は下記のページまで。

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それでは解説していきます。

排泄介護の基本となる知識と技術

利用者に尿意や便意があり、自力での移動が可能なら、通常のトイレを使用します。一方、尿意や便意があってもトイレまでの移動が難しい場合には、ポータブルトイレを使用します。それでは各それぞれの介助方法について解説いたします。

トイレの介助

トイレの介助においては、姿勢の保ちやすさや負担の軽減などを考慮して洋式便器を選ぶのが望ましく、介護福祉職は、利用者の排泄パターンを把握し、適切な時間にトイレまで誘導するようにします。利用者が自分で陰部を拭き取ることが難しい場合は、介助を行うようにします。

ポータブルトイレの介助

ポータブルトイレは、トイレまでの移動が難しい利用者がベッドサイドなどで使用します。夜間のみ使用するケースも多く見られるため、照明などを工夫して、転倒の予防に配慮する必要があります。なお、ポータブルトイレは、利用者の足元に置くことを原則として、片麻痺がある場合は健側に置くようにします。

【ポータブルトイレを使用するときの留意点】

スイングアーム介助バーを設置すると、自力で移動しやすい

②片麻痺のある利用者の場合、立位になったときにふらつきや顔色の変化などがないか観察する

③足を引くことのできるスペース「蹴り込み」があるタイプを選ぶと、安全な立ち上がりができる

④利用者が座位で移乗する場合も考慮し、トイレの座面の高さとベッドの高さを揃える

採尿器・差し込み便器における介助

採尿器の介助

採尿器を使用する場合の体位は、男性は「側臥位」女性は「仰臥位」で行うようにします。女性の場合は尿が飛び散らないように、膝は曲げて膝頭をつけ、閉じるようにします。

差し込み便器の介助

差し込み便器を使用する場合は、使用前に便器を温めておきます。利用者には「仰臥位」で膝を曲げて足底をベッドにしっかりつけ、膝をくっつけた状態で腰上げ動作を行います。腰上げ動作をできない場合は、側臥位になってもらい便器を当てて、仰臥位に戻ります。

肛門部が便器の中央にくるようにし、便が飛び散らないようにトイレットペーパーを便器の中に敷いてきます。また、便器の縁が仙骨部に当たらないように注意します。

男性の場合は尿意が同時に起こることも想定し採尿器も準備しておきます。

おむつ介助について

おむつは、利用者に尿意や便意がなく、ベッドからの移動も困難な場合に使用します。おむつを使用することで、意欲の低下や寝たきりの状態が引き起こされることもあります。利用者の自立のためにも、できる限り使用を避けるのが理想です。

おむつを装着するときの留意点

①布おむつの場合、男性は尿道付近女性は後ろ側を分厚くする

②おむつカバーの上端は、ウェストに合わせる

③腹部とおむつの間には指2本程度の余裕を持たせる

④紙おむつの腹部のテープは、「下のテープは斜め上に、上のテープは斜め下」に向かって止めることにより、腹部の圧迫防止になる

おむつ交換するときの留意点

①オムツを交換するときは、必ず使い捨て手袋を着用する

②オムツを処分するときは、汚れている部分を内側に丸めて片付ける

③おむつ交換と合わせて陰部洗浄を行う場合は、熱くも冷たくもないぬるめの37〜39℃程度の湯を使う

利用者の状態に応じた排泄介助

便秘の場合

便秘は、大腸がん、大腸の蠕動運動の低下やストレスなどを原因として、大腸に便が留まり、排泄が難しくなっている状態をいいます。便秘の種類を大きく分類すると①器質性便秘②機能性便秘(弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘)に分類されます。

【便秘の方への支援】

食事の量や水分摂取量は減らさず、食物繊維の多い食品を勧める(根菜類、海藻類、キノコ類)

腹部、腰部を温めて、大腸の蠕動運動の活性化を図る

③大腸の流れに沿って「上行結腸→横行結腸→下行結腸」の順に「の」の字を書くように時計回りにマッサージを行う

④排便を行うときは腹熱がかかりやすいよう、やや前かがみの姿勢で便座に座るように促す

⑤散歩など適度な運動を進めたり、規則的な排便習慣を身に付けられるように、食後のトイレ誘導などを行う

下痢の場合

下痢は、ストレス、感染症、過食などを原因として、便が液状または流動状態になり排泄される状態をいいます。体内の水分が減少することで体力を消耗し、脱水に陥ることも考えられますので注意が必要です。

【下痢の方への支援】

①脱水を予防するためにスポーツドリンクなどを摂取する。水分の中でも牛乳・カフェインを含むもの(紅茶・コーヒー)などは避ける

②排便の後、肛門の周囲を柔らかいタオルなどで抑えて拭く

③腸管出血性大腸菌などの感染症の恐れもあるので、排泄介助の際には汚れたオムツを感染源として厳重に処理をする

尿失禁の場合

尿失禁は、身体の機能の低下などによって、排尿のコントロールが難しくなり、尿をもたらしてしまう状態をいいます。主に「切迫性尿失禁」「腹圧性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」「反射性尿失禁」の5種類に分類されます。

【尿失禁の方への支援】

認知症の方は、排泄時間を把握しトイレ誘導する

腹圧性尿失禁の場合は、骨盤底筋群を鍛える体操が効果的です

膀胱留置カテーテルの場合

膀胱留置カテーテルは、完全に尿が出ない「尿閉」の場合や不完全な排尿しか出ないなど、自力での排尿が難しい場合にカテーテルと呼ばれるチューブを膀胱まで通して、排尿を行う器具です。

カテーテルを用いた人工的な排尿のことを「導尿」と呼びます。

【膀胱留置カテーテルの方への支援】

①膀胱留置カテーテルを装着する場合次のように固定します。

男性:陰茎を上向きにして、下腹部にカテーテルを固定

女性:大腿部に下向きで固定

蓄尿袋は、腰よりも低い位置に固定する。膀胱より高い位置に蓄尿袋があると尿の逆流が起こり感染の危険性があります

③観察する時以外は羞恥心やプライバシーに配慮し、カバーをかけるようにする

④尿路感染や脱水を予防するために水分をしっかりと摂取する

⑤利用者が自己導入を行うことが可能な場合は、排尿しやすい座位などで行えるように支援をする

⑥カテーテルの装着は医療行為になるので、介護福祉職は行わずは、カテーテルの準備や姿勢の保持を行う

ストーマ(人工肛門・人工膀胱)の場合

ストーマとは、人工的な排泄行為、消化管や尿路障害で通常の排泄ができない時に排泄ルートとして作られます。腸や尿路に開口部を設け、採尿や採便用のパック(パウチ)を装着するものです。

①消化管ストーマ(人工肛門)

②尿路ストーマ(人工膀胱)

に分けることができ、ストーマを装着している方のことをオストメイト」と呼びます。

介護福祉職の支援としては、パウチに溜まった排泄物を捨てること、また、専門的な管理を必要としないストーマ装具の交換をすることもできます

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