【介護福祉試験対策】「介護過程」について大阪介護の学校講師が解説
介護過程とは、利用者の抱える課題を捉え課題を解決するための計画を立案し、実施、評価するプロセスのことです。今回はその流れについて一つ一つ解説し、介護福祉士国家試験でも出題される要点についてまとめていきたいと思います。また、利用者に関わるチームアプローチについても国家試験のカリキュラムである「介護過程」に含まれる内容となりますのでここで解説していきます。
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介護過程の展開とプロセス
介護過程は①「アセスメント」→ ②「計画の立案」→ ③「実施」→④「評価」という流れで行われます。この流れを繰り返すことにより、質の高い介護の提供が可能となり、介護の専門性を高めていくことができます。
介護過程の最終的な目標は、利用者の自立と自己実現です。そのためにはQOL(生活の質)の向上や尊厳の保持を常に念頭に置いて、介護過程を展開することが大切です。
それでは、冒頭で述べた、介護過程を構成する4つの内容について解説していきます。
アセスメント
介護過程では、まず利用者に関する情報収集を行い、その解釈・分析・関連づけ・統合を通じて、ニーズや生活課題を把握するアセスメントを実施します。情報の分析や統合を通じて、その利用者は「何ができていて何ができていないか」「何をやりたくてやれずにいるのか」「今後どのような状態が起こり得るのか」といった生活課題が明確化されます。これらの生活課題は、1つや2つに限定されるものではありません。複数の課題の中から、利用者の自立と自己実現、QOLの向上、緊急性などを考慮して優先順位をつける必要があります。
情報収集
利用者に関する情報は、多角的かつ継続的に収集する必要があります。
例えば、「利用者自身がどのような考えを持ち、訴えをしているか」「介護福祉職による観察を通じて気づいた事はないか」「医療職などの他職種から得られる情報はないか」といったことについて、幅広い視野から利用者の全体像を捉えます。これらの情報は「主観的情報」と「客観的情報」の2つに大きく分類されます。介護福祉職の一方的な介護にならないように、この2つの情報を合わせて収集していくことが求められます。
【主観的情報】
利用者自身の考え方、感じていること、訴えることなど。言語的コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションも活用して、利用者のニーズを引き出します。
【客観的情報】
介護福祉職の観察、健康状態に関するデータ、記録、他職種や家族から得られる情報。日々の観察や介護記録、バイタルサインの測定、他職種との情報共有によって、利用者の状態や状況を把握します。
ここで問題!
【問題】
家族から聞いた利用者の生活歴は、介護過程における主観的情報に該当する。
【答え】
答えは「×」です。家族から得られた情報は、客観的情報に該当する。
計画の立案
計画の立案は、設定した目標に沿って、生活課題を解決するための具体的な介護計画を作成していく段階です。
目標の設定
明確になったニーズや生活課題を踏まえて、それらを解決するための目標を設定します。目標は「短期目標」と「長期目標」を設定して、常に連動させて考える必要があります。
目標の設定にあたっては下記の事について注意する必要があります。
①目標の「主語」は、主体的に取り組めるように利用者として、積極的な参加を促し、話し合いながら設定していく
②目標は、実現可能な内容にする
③目標達成までの期間を定めておく
④目標を評価するための基準を具体的に示しておく
それではそれぞれの目標について解説していきます。
【短期目標】
長期目標を達成するための当面の目標です。期間を細かく定めて、段階的に設定します。期間の目安は、数週間から数ヶ月
【長期目標】
生活課題を解決するための最終的な目標です。時間の目安は6ヶ月から1年
介護計画の立案
介護計画とは、介護保険制度におけるケアマネージメントで作成されるケアプランの目標を実現するために、各専門職が協働して立案する「個別支援計画」のことをいいます。次の留意点に考慮しながら計画を立案します。
介護計画の立案における留意点
①利用者の生活習慣や価値観を踏まえた個別的な内容にする
②誰が読んでも同じ支援ができるようにわかりやすい表現で記入する
③支援内容、支援方法を具体的に示し実現可能な計画にする
④計画を実施する期間を明確にしておく
⑤支援内容、支援方法による効果をあらかじめ予測しておく
⑥必要に応じて、支援内容、支援方法に変更を加える
⑦利用者と家族の意向を反映させ、同意を得る
ここで問題!
【問題】
介護計画の立案においては、本人や家族の希望と乖離しても良い。
【答え】
答えは「×」です。介護計画の立案においては、利用者と家族の意向を反映させ、同意を得ることが大前提である。
実施
介護計画に基づき、実際にサービスを提供する段階です。実施にあたっては、まず、利用者の安全と安心に配慮すること、自立支援を意識することを念頭に置いておきます。そして、基本的には、介護計画に示した支援内容・支援方法を介護福祉職全体や他の専門職で統一して提供します。また、その際には利用者の状態・状況・以降に合わせて、必要な支援を提供するようにします。
実施段階における記録
サービスの実施段階においては、客観的な事実を記録に残すことが大切です。介護計画の内容に沿って、事実関係を示し、利用者や家族の表情、言動、介護復職の対応なども記録します。ただし、根拠のない予測や憶測は記録に含まないように注意します。
SOAP方式の記録
SOAP方式とは、問題志向型システムに基づき実施内を整理してまとめる記録方式です。
S(Subjective Data:主観的データ)
O(Objective Data:客観的データ)
A(Assessment:分析)
P(Plan:計画)
の4項目に該当する内容分類して記述していきます。
評価
評価は計画の実施を通じて、設定した目標(短期目標・長期目標)にどのくらい到達できたかを図る段階です。計画は利用者の個別性を踏まえた内容になっているため、他の利用者の目標達成度とは比較せずに評価します。
評価の方向性
介護福祉職の責任のもとに行われ、利用者や家族の意見も参考にし、結果に至るまでのプロセス全体を評価します。評価は、計画は立てていたが実施しなかったものも、なぜ実施しなかったのかを評価します。
評価を行う日は、目標を設定する際に決められていますが、利用者の状態に変化があった場合や、家族の要望などにより、早期に行うこともあります。
再アセスメント
目標の達成が不十分だと判断されたり、新たな生活課題が見られたりした場合には、再び介護過程のプロセスを展開していきます。これを再アセスメントといいます。
再アセスメントは、1つの目標が達成されていても、支援の継続・変更・終結を判断するために、目標ごとに実施されます。その際、利用者の満足度をもとにサービスの継続を判断し、介護計画の内容を変更する場合は、利用者やその家族に説明し、同意を得なければなりません。
ここで問題!
【問題】
介護過程の評価は、支援の実施状況に関する情報を整理して、評価する。
【答え】
答えは「○」です。利用者や家族の意見も参考にし、結果に至るまでのプロセス全体を評価します。
介護過程におけるチームアプローチ
介護過程におけるサービスは、チームによって行われます。チームのメンバーは、利用者に関する情報を共有し、同じ目的や目標を目指しながら連携・協働していきます。
チームアプローチでは、特定の専門職がリーダーになるという事はありません。その中心は利用者であり、サービスを提供する各専門職はそれぞれの視点から、専門性を活かした支援を行います。
チームのメンバーは固定されておらず、利用者の人数や生活課題に合わせて構成されます。専門職に限らずボランティアや利用者の家族がメンバーの中に含まれることもあります。
チームアプローチにおける介護福祉職の役割
チームアプローチにおいては、様々な専門職が集まり、生活課題の把握や支援の方向性を定めていくために、ケアカンファレンスを開催します。こうした会議の場で介護職に求められているのは、利用者に最も近い立場にいる専門職として、利用者の思いを代弁していくことです。
利用者の心身の状態にどのような変化が見られるのか?さらには家族がどのような感情を抱いているのか?観察やコミニケーションを通じて、キャッチできるようにしていくことが大切です。そして状況に応じてチームメンバーである他の専門職につなげていきます。
また、介護保険制度のおけるケアマネカンファレンスは、ケアプランの内容を検討する会議として「サービス担当者会議」が開催されます。サービス担当者会議は、介護支援専門員(ケアマネージャー)が開催します。
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