【介護福祉士試験対策】身体障害とは?大阪介護の学校講師が徹底解説
今回、介護福祉士国家試験の試験範囲でもある「障害の理解」のカリキュラムから身体障害についてのの内容を解説していきたいと思います。身体障害には様々な障害が含まれます。「視覚障害」「聴覚障害」「言語障害」「肢体不自由」「内部障害」が存在します。
国家試験に挑戦される方はその障害の原因疾患やその疾患の症状、また身体障害がある方への対応について覚えておく必要があります。
このような内容を現在、カイゴミライズアカデミーで介護福祉試験対策コースで学ぶことができます。ご興味ある方は下記のページまで。
【介護福祉国家試験対策コース】
視覚障害について
視覚障害には「視力の低下」「視野の狭窄」「明順応・暗順応の低下」といった症状があります。また、視覚障害には先天的なものと、後天的なものがあり、後天的な視覚障害をもたらす疾患には代表的なものとして「白内障」「緑内障」「加齢黄斑変性症」「糖尿病網膜症」などがあります。これらの疾患について解説していきたいと思います。
視覚障害をもたらす代表的な原因疾患
【白内障】
原因:水晶体の白濁
症状:視界がかすみ、視力が低下する
【緑内障】
原因:眼圧の上昇
症状:視神経が障害を受け、視野が狭くなる
【加齢黄斑変性症】
原因:黄斑の萎縮や、異常な血管の出現
症状:視力の低下や物の歪み
【糖尿病性網膜症】
原因:糖尿病の高血糖により、もろくなった網膜の血管から出血が多くなる
症状:視力の低下から始まり症状が進行すると網膜剥離を引き起こし失明に至る
【網膜色素変性症】
原因:遺伝子の異常により、網膜の細胞の死滅や変性が起きる
症状:視野の狭窄や視力の低下。夜盲もみられる
【ベーチェット病】
原因:原因不明の炎症性疾患。難病の1つ
症状:ぶどう膜炎による視力の低下。口内炎や陰部の潰瘍などもみられ、症状が進行すると網膜剥離を引き起こし失明に至る
視覚障害者へのコミニケーション
視覚障害のある人に言語コミニケーションを図る時に指示語や代名詞の使用はできるだけ避けて、視覚情報を整理して具体的に物事を伝えるようにします。
それと同時に、点字器や点字タイプライターなど触覚を活用したコミニケーションツール
音声読み上げソフトやポータブルレコーダーなどの聴覚を活用したコミニケーションツールが便利です。
視覚障害者への移動介助
①介護者は利用者の白杖を持っていない方の斜め前に立ちます
②利用者の白杖持っていない方の手を介護者の肘に導きます
③進むときは「進みます」、止まるときは「止まります」としっかり声かけを行います
④方向転換するときには「クロックポジション(時計の針に見立てて向きを変えてもらう)」を活用します。
聴覚障害について
聴覚障害には先天的なものと、後天的なものがあります。聴覚障害には「音を聞き取りづらい」「音を聞き取ることが全くできない」という症状があり、音が聞き取りづらくなる後天的な聴覚障害として難聴があります。それではその難聴について解説していきます。
難聴の原因と特徴
【伝音性性難聴】
原因:外耳や中耳の障害。滲出性中耳炎や慢性中耳炎などで起こります
特徴:治療による回復が可能。補聴器は有効
【感覚性難聴】
原因:内耳や感覚神経の障害。突発性難聴、老人性難聴、メニエール病などで起こります
特徴:治療による回復は難しい。補聴器の効果は限定的。高音域の音から聞き取りにくくなる
聴覚障害者へのコミュニケーション
聴覚障害のある人は主に視覚を通じて周りの情報を得ています。コミニケーションとしては
筆談、読話など視覚を活用したコミュニケーションツール
難聴のある人の場合は、静かな明るい場所で正面を向いてゆっくり、はっきりと簡潔に話します。
言語障害について
言語障害は、音声機能の障害である「構音障害」、言語機能の障害による「失語症」に大きく分けられます。
まずは構音障害について解説していきます。
構音障害
【原因】
発語に関わる器官(舌・口唇など)の動きが制限されることにより、正確な発声や発音が難しくなります。
【支援のポイント】
言語障害のある人の特徴として、話す事は難しいが、言葉の理解は可能です。コミニケーションを図るときは相手の話にしっかりと耳を傾け、聞き取れなかった事は必要に応じて相手の言葉を繰り返したり再確認を行います。なおコミニケーションツールとしては、五十音表を使った文字盤、携帯用会話補助装置、筆談などがあります。
失語症
失語症は、脳の言語中枢が障害されることにより、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算」といったことがスムーズにできなくなります。障害される脳の部位によって次の2種類に分類されます。
【運動性失語(ブローカ失語)】
特徴:自分から話す事は難しい。他人の話を聞くことや言葉や文字の理解はできる。
支援:絵や写真などの視覚的な情報を用います。話を聞くときは閉じられた質問。
【感覚性失語(ウェルニッケ失語)】
特徴:話す事はできます。ただし、話す内容に間違いが多く、他人の話の理解や、言葉や文字の理解も難しい。
支援:身振りや手振りなどの非言語的コミュニケーションを中心に関わる
肢体不自由について
肢体不自由は、先天的または後天的な原因によって「上肢」「下肢」「体幹」に麻痺や動作の制限といった運動機能障害がみられます。原因疾患としては「脳性麻痺」が多く、関節可動域の制限や関節の変形が見られる「関節リウマチ」、事故を原因として引き起こす「脊髄損傷」などが代表的な障害です。ここではその代表的な疾患について解説していきます。
脳性麻痺
脳性麻痺は、受胎から生後4週間以内に何らかの原因で脳が損傷を受けることにより起こる障害です。
関節リウマチ
関節リウマチは中年の女性に多く見られる原因不明の疾患です。「関節の痛み」「腫れ」「可動域の制限」「朝のこわばり」などが主な症状であり、症状の進行に伴い、関節の変形に至ります。
関節リウマチのある人は、普段の生活から関節の保護に努めることが大切です。私たち介護者としてはどのような支援が求められるか次に紹介いたします。
【動作の支援】
指先ではなく、手や腕全体を使って関節に負担がかからないように持ち運びをするように勧める
【食事の支援】
関節の動きが制限され、細かな動作が難しくなっている場合があるため状態に応じた福祉用具を活用できるように勧めり、
【トイレの支援】
立ち上がりの動作を補助するため、トイレの便座に「補高便座」を利用します。また、トイレットペーパーの位置も関節可動域の状態を考慮して取りやすい位置にする
【その他状況に応じて必要な自助具】
①腓骨神経麻痺では下垂足がみられるため、足首の固定をするために「短下肢装具」の使用
②握る動作や関節の可動域がある場合の整容時には「長柄ブラシ」「太柄ブラシ」の使用
③離れた場所にあるものを引き寄せたり、着替えをするときに役立つ「リーチャー」の使用
脊髄損傷
脊髄は「脊髄」「胸髄」「腰髄」「仙髄」「尾髄」に分類され、脳とともに中枢神経を担っています。事故などを原因とした脊髄損傷により、脊髄の中にある神経伝達が途切れ、神経の先の部位に麻痺の症状がみられます。麻痺の起きる部位は脊髄の損傷部位によって異なります。
【脊髄損傷】
四肢麻痺(両側の上下肢の麻痺)
【胸髄損傷】
体幹、下肢麻痺(上肢は正常)
【腰椎損傷】
下肢麻痺(対麻痺)
【脊髄損傷の特徴】
①排尿・排便障害を伴う
②損傷部位が高位であるほど褥瘡ができやすい
③頸椎損傷、胸椎上部の損傷では起立性低血圧が起こりやすい
④頸椎損傷では体温調節機能の障害を伴い、うつ熱になりやすい
【脊髄損傷のある人への心の支援】
脊髄損傷による肢体不自由は、事故による後天的な障害です。もともと健康なからだから障害を背負うので、そのショックから将来を悲観してしまい、リハビリテーションへ積極的に取り組むことができないというケースもよくみられます。介護福祉職は、利用者の障害受容の過程を理解し、受容と共感を大事にしたコミニケーションが大切です。
障害受容の過程に関しては違うページに詳しく解説していますので下記のページを参考にしてください。
【障害受容の過程について】
内部障害について
内部障害は、「心臓」「腎臓」「呼吸器」「膀胱・直腸」「小腸」「肝臓」「HIV」の7つの内臓が対象です。また、外見だけではどのような障害を受けているのかが伝わりづらい「見えない障害」ともいわれます。障害によってどのような治療が必要とされているのかをしっかりと理解した上で介護に当たることが必要です。
心臓機能障害
心臓は血液を全身に送り出すポンプとしての機能を果たしています。心臓機能障害には、老化やストレス、心臓の疾患を原因として、脈拍のリズムが不規則になる不整脈があります。その不整脈について次に解説していきます。
【不整脈について】
不整脈には①「徐脈(脈が平常時より遅くなった状態)」と②「頻脈(脈が平常時より速くなった状態)」に分類されます。
【徐脈の対応】
徐脈に対しては、心拍のリズムを正常な状態に保つために人工ペースメーカーが使用されます。鎖骨の下などに埋め込まれ、リードを通じて心臓に電気刺激を与えます。
【頻脈の対応】
頻脈に対しては、植込み型除細動器が使用されます。ペースメーカーとしての役割も果たしつつ、重度の頻脈の場合には、心臓に電気ショックを与えることで不整脈を和らげることができます。
腎臓機能障害
腎臓は尿の生成に関わる器官です。腎臓機能障害は、腎臓に流れ込む血流量の低下や尿路の閉塞などによって急性腎不全が起こり、腎臓機能の低下が長期間に及ぶことで慢性腎不全に至ります。
【腎臓機能障害の食事の注意点】
慢性腎不全では食事の管理が必要です。特に「タンパク質」「カリウム」「塩分」「水分」などの摂取制限が重要です。また、摂取制限によって不足するカロリーを補うために砂糖や油類を適度に使用した献立を意識するようにします。
【腎臓機能障害の治療】
症状が進行すると「透析療法」や「腎臓移植」が行われます。透析療法は腎機能の低下により体内に溜まった老廃物を、体外に排出するために行うものです。透析療法は次の2つになります。
①「血液透析(血液を外部の装置に通して浄化する方法)」
②「腹膜透析(腹くう内に透析液を入れ、老廃物を吸収させて取り除く方法)」
呼吸器機能障害
呼吸器は酸素と二酸化炭素のガス交換に関わる器官です。呼吸器機能障害は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」を原因として起こります。タバコの煙やなどにより気管支の炎症が起こり、気管支が詰まり、呼吸に支障が出るようにます。
【呼吸器機能障害の酸素療法】
呼吸器機能障害のある人が在宅で生活するために「在宅酸素療法」が行われます。これはカニューレと呼ばれるチューブを鼻につけて、酸素濃縮器から人工的に酸素を送り込む方法です。在宅酸素療法では、高濃度の酸素が使用されるため、引火に注意が必要です。近くにタバコやガスコンロ、石油ストーブなどをおかないよう注意が必要です。
【呼吸器機能障害の方の呼吸方法と姿勢】
慢性閉塞疾患の場合、「口すぼめ呼吸」を心がけて、常にゆっくりと呼吸をするように意識します。起座位は呼吸が楽になります。また、トイレでは洋式便器を使用します
【呼吸器機能障害の食事】
食事は少量ずつ回数を増やして時間をかけて食べます。呼吸時や排痰に多くのエネルギーが必要になるため高カロリーの献立を意識する
【呼吸機能障害の入浴時の注意】
肺への負担を和らげるために湯温は適温に抑え、長時間の入浴を避ける。また、水位も胸の下あたりまでにする
膀胱・直腸機能障害
膀胱・直腸は、排尿や排便に関わる器官です。主に腫瘍などを原因とし、膀胱や直腸の切除により排尿障害や排便障害がみられます。正常な排尿や排便が難しくなると「人工膀胱」「人工肛門」が増設されます。これらの排出口のことを「ストーマ」と呼びます。それではそのストマーの種類について解説していきます。
【尿路ストーマ】
膀胱癌、前立腺がんなど原因として増設される人工膀胱の排出口です
【消化管ストーマ】
直腸がん、大腸がんなど原因として増設される人工肛門の排出口です。消化管ストーマは増設する部位によって便の形状が変わります。「回腸ストーマ(水様便)」、上行結腸ストーマ以降は、「水様便・泥状便」から徐々に「軟便・有形便」に変わっていく
ここで問題!
【問題】
大腸がんでは、消化管ストーマが必要となる場合がある。
【答え】
答えは「○」です。大腸がんや直腸がんでは消化管ストーマ、膀胱がんや前立腺がんでは尿路ストーマ増設されます。
小腸機能障害
小腸(十二指腸、空腸、回腸)は、食物の消化を行う消化管の1つで、栄養分を分解・吸収する役割を担っています。小腸機能障害は何らかの疾患を原因として小腸切除したことにより、栄養分の摂取不良などが起きるものです。
【小腸機能障害の栄養補給する治療法】
人工的に栄養を摂取する治療方法としては、
①静脈にカテーテルと呼ばれる管を挿入する「中心静脈栄養」
②鼻などからチューブを通して、胃や小腸に直接栄養分を注入する「経管栄養」
などが実施されます
肝臓機能障害
肝臓は、消化液を分泌する消化腺の1つで「栄養分の貯蔵」、「物質の代謝」などに関わっています。肝臓機能障害の原因には、ウイルスの感染によるB型肝炎やC型肝炎、肝炎の進行によって肝臓が硬くなる肝硬変があります。
【肝臓機能障害の注意点】
肝硬変は、腹水を引き起こす原因ともなります。腹水がみられたときには「塩分の制限」や「利尿薬の服用」などが行われます。また、「易感染性(免疫機能の低下により、感染しやすくなる状態」がみられる場合もあるので、外出時にはマスクをつけるなど感染予防も重要です
ヒト免疫不全ウィルス
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるウィルスです。HIVは、性行為や輸血などによって感染し、徐々に免疫機能が低下します。免疫機能の低下によって、発熱、からだのだるさ、吐き気などの症状がみられます。
また、健康な人であれば発症しない「日和見感染」を起こしたり、皮膚や粘膜の表面の組織が剥がれてしまう「びらん」という状態が現れたりすることもあります。
感染を防ぐためには、食事においては生物を避けて、常に前進を清潔な状態に保っていくことが大切です
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